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インド更紗

そもそも更紗って何_ 其の弐

世界を魅了したエキゾチック文様

 

インド更紗

木綿のような、蛋白質を含まない植物繊維は赤系統の染料がうまく染まらないので、日本でもヨーロッパでも、木綿染めの色といえば、藍を中心に茶色や黄色といったところにとどまっていた。

ところがインドでは、この地に生息する茜系の染料を用いて、鮮やかな赤を染め出すことができた。

それにはまず、ミロバランの実から採った液と水牛の乳を混合した染め液に綿布を浸けることで繊維を動物性に近付け、次に、赤くしたい文様には明礬液を、黒くしたい部分には鉄塩を、紫には混合液を塗り、その後で茜の染め液に浸ける。

すると、それぞれが反応して赤・黒・紫の文様が一度に現れ、媒染剤の付いていないところは白く残る、というものである。


古渡インド更紗/18-19世紀

このように、たった一度の染めで何色もの色を染めることができたのがインド更紗の大きな特色で、更に藍色や緑色を加えたいときには、蠟伏せの後で藍を染めて、緑にしたい場合は、ミロバランを重ねた。

なお、文様は手描きと木製ブロック(木型)を使う場合がある。

更紗文様の木製ブロック(木型

木綿の生地は、細手の糸を使った良質なものと、日本では“鬼更紗”と呼ばれて人気のある、太手の糸を使った、粗くてざっくりとしたものとがある。

文様は生命の樹という立木を中心に、楽園をイメージする動物や、空想の花や果実など生命力溢れる文様を配したものが主体。赤を基調とした鮮烈な色彩の木綿布は命の響きを表現して、世界中の人々を虜にした。

生命の樹文様更紗〈部分〉/18-19世紀インド

インド東海岸のマスリパトムではペルシャ向けの高級更紗が、そして、その南のプリカットなどコロマンデル海岸では東南アジア向けの更紗が作られていた。

更に、西北部グラジャート周辺地方でも、東南アジアやヨーロッパ向けの更紗が作られた。

 

熊谷博人 Hiroto Kumagai