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徳永英明

昭和歌謡_其の92

「禁断の闇」を感じさせる、不健全な歌詞

 『壊れかけのRadio』
『レイニー ブルー』
by 德永英明

ヒット祈願

 遅ればせながら、援護射撃をさせてもらいましょう(笑)。すっかり当サイトでも〝お目〟馴染みになって頂いております、わが高校の同級生、「口腔科」専門医の林晋哉の新刊本が、ようやく巷に現れ出ましたぁ~!

当サイトの主筆が、ドーンと別枠で詳しく紹介してくれていますが、『歯・ 口・咀しゃくの健康医学』(さくら舎刊/1650円)というタイトルの本です。

私も1年以上、何かにつけて〝さまざま〟協力させてもらいましたので、自分の著書ではないものの、わが子の如く愛おしい存在です。

高齢者が寝たきり介護状態、認知症状態にに至らぬよう、身体のどこの臓器のケアよりも先に、口腔領域つまり【お口の中】の不調をすべて取り除くのが肝要! その解説と方法論が、実にわかりやすく具体的に書かれています。

過去、高齢者の口腔ケアに関する類似本は多々、出版されていますけれど、 「ズバリこれが肝要!」と言い切った内容の本は、おそらく史上初じゃないでしょうかね。手前味噌ですが、大袈裟でもお世辞でもなく、心底から「素晴らしい内容だ」と、胸を張って皆さんに宣伝できます。

私は本の販促部長を自認し、全国各地の新聞社、健康系の雑誌編集部、高齢者介護に関わる施設全般……およそ3週間に100ヶ所ほど電話をかけまくり、のべ130冊もの本を謹呈送付いたしました。

長年私が住まう高崎市内の、〝超オンボロ〟一軒家の仏間は、急遽、林の著書の配送工場と化しました。印刷屋から直送されてくる巨大段ボールに詰まった、大量の本の1冊1冊に【著者謹呈】のスタンプを押し、林から預かった【ご挨拶文】と【内容の概要】を差し込み、ゆうちょのスマートレター(1部180円也) を用いて、ポスト投函するのですが……。

梱包のシールを貼リ終えた直後、仏壇の正面にそれを5冊ずつ置き、わが家は真言宗なもんですから、教祖・空海直伝の、真に呪術力に富む(考えようにとってはオッソロシイ!)秘伝中の秘伝の光明真言

おん あぼきゃぁ べいろしゃのぉ
まかぼだら まに はんどま じんばら
はらばりたやうん

を、本の爆発的なヒット! 多くの読者からのポジティブな反響! それを胸の内で祈願しながら、3回唱えます。

唱える際、仏壇の最奥に鎮座まします、守本尊の大日如来と舎弟分の不動明王の仏像に向けて、右の掌を広げて掲げるのですが、見知らぬ人が、初めてこの光景に接すると、いささかゾッとするでしょうね。何かヤベェー呪いの儀式でもしているんじゃなかろうか??? と勘違いされそうです。

実際、カミサンもは配送工場と化してからの連日連夜、仏間から頻繁にチンチン、鐘の音と共に線香が炊かれ、その音と香りが他の部屋にも漏れ出ますので、「お願いだから、夜中のチンチンだけは止めてよ~! さすがに怖いよ~!」と 真顔で訴えられましたからね。

すでに私のお袋(介護歴15年)担当の、介護ケアマネージャーの、ベテラン女性は、「こういうテキストを待ってたのよ!」と、自腹で25冊ほど購入してくれて、自分が所属する介護ケア施設のスタッフ全員に「ぜひ読ませたい!」と電話で伝えてくれました。さらに幾つかのセクションから、「林先生にお会いした い!」という問い合わせも頂きました。

いやぁ、単純に嬉しいですね。私も物書きとして、キャリアだけは30年近くありますけれど、ジャンルがエロ風俗系ですからねぇ^^;。たとえば14年前に、花園乱名義で出した著書『パンツを売った少女たち』となりゃ、内容は面白い!  とひそかに胸を張れても、おおっぴらに売り歩くわけにも行きますまい。

さて、そろそろ歌謡曲の話に移りましょう。

壊れかけの…

林と毎週土曜日の夜、歯科本ほかの打ち合わせがてらの酒宴は、決まって上野は稲荷町から浅草エリアにある「3店舗のうちのどれか」がお決まりで、

その1つの焼肉屋の若い店員クンが、歌手を目指して上京した経緯もあってか、意外や、今から30年前の大ヒット曲……、当時、〝売れ線〟男性ニューミュー ジック系歌手の代表格だった、徳永英明が作詞&作曲&歌唱した『壊れかけの Radio』(平成2年7月7日発売)が大好きで、林いわく「カラオケでコイツに唄わせたら、超絶品だぜ!」だそうな。

いやぁ懐かしい、平成2年……、恥ずかしくも私がカミサンと結婚式を挙げたのが、翌年の6月1日でしてね。この楽曲の歌詞内容が、私の仲間内では、誠に勝手で失敬ながら、

「新宿二丁目の公園のベンチに、ぽつんと少年が1人……。つい最近、自分の肉体が急に大人に成長(性長)してしまったため、最愛だった年上の恋人に捨てられ てしまった。それが悲しくて、ツラくって、つい自棄になって『もうボクなんて、どうにでもなっちまえ!』と、自分で自分を傷つけような行為に走りつつ、 『誰かボクに、本当の愛を教えてよ~! お願ぁ~い!』と、雨に濡れた子猫のような姿で、助けてくれる誰かを待ち望んでいる……そんな心理を、実にリアルに描いた、ゲイソングの傑作だ!」

と、もう完全に決めつけてしまいましてね。つまり、男同士の性愛、今流の言い方をすればボーイズラブでしょうかね。

徳永さん本人はもちろん、この楽曲の制作スタッフが聴いたら、もう大迷惑!  ひょっとして激怒しそうな話かもしれませんけれど、今や時効でしょうし、当時は今ほど、何かに付けてコンプライアンスがどうの、を持ち出すことなど皆無でしたから(その良し悪しは別にして)、苦笑話として読んでいただきましょう。当時、私らだけでなく、結構多くの口さがない連中が、そんな噂を垂れ流していたのも、事実ですから。

それに歌謡曲の歌詞というのは、それがどんな風変わり内容だったり、エキセントリックな内容だったりしても、言わずもがな、ながら、〝そこ〟に描かれた 主人公イコール歌い手、……では断じてありません! から、逆にリスナーの個々 が、楽曲制作者の意図を、まるっきり理解しない「超ふざけた解釈!」をしたとしても、それはリスナーの自由ということになりましょう。

何故、そんな疑惑が生まれたか? 以下に歌詞を載せてみます。

♪~何も聞こえない 何も聞かせてくれない
僕の身体が昔より 大人になったからなのか
ベッドに置いていた 初めて買った黒いラジオ
いくつものメロディーが いくつもの時代を作った

思春期に少年から 大人に変わる
道を捜していた 汚れもないままに
飾られた行きばのない 押し寄せる人波に
本当の幸せ教えてよ 壊れかけのRadio

(中略)

華やいだ祭りの後 静まる街を背に
星を眺めていた けがれもないままに
遠ざかる故郷の空 帰れない人波に
本当の幸せ教えてよ 壊れかけのRadio~♪

久方ぶりに、改めて歌詞を〝じっくり〟読み進めていくと、ふうむ、まぁ……以 下は、大いなる〝こじつけ〟になりましょうが、冒頭の歌詞の【何も聞こえない】は、どうでもイイです。……でも次の【何も聞かせてくれない】というのは、 いささか引っかかります。誰かが、何らかの意図を持って、主人公の少年に「聞かせない!」わけですからね。

さらに次……、畳み込むように、【僕の身体が昔より 大人になったからなのか】と来ちゃいます。〝ここ〟の歌詞、なんとも生々しいと感じませんか? 作詞は徳永自身が書いていますが、どうしてこんなダイレクトな日本語表現を選んだのでしょうね? 少年の肉体が大人になることを、理由は判然としませんけれ ど、誰かしら少年に親しい人間が「嫌がった!」わけですね。コイツはいったい誰なのか? 私は無性に気になります。

その後の歌詞も、【思春期】に【汚れのないまま】だった【少年】も、いつし か【遠ざかる故郷】を捨てて、まるっきり【飾られた行き場のない】……あまりに即物的に日常がやり過ごされていく都会の雑踏に没入し、【押し寄せる人波】に 揉まれながら、気づけば【本当の幸せ】を知らぬ【大人に変わ】っていた……と。

常識的思考のリスナーであれば、どこにでもある、田舎を捨てて憧れの東京に 住み着くうちに、すっかり〝すれっからし〟な自分になってしまい、故郷へは帰りたくても帰れない! というテーマの、例えば『木綿のハンカチーフ』(昭和 50年12月21日発売/歌唱:太田裕美/作詞:松本隆/作曲:筒美京平)……と同種の印象を得るのかも? しれませんがね。

そしてこの〝お決まり〟のドラマには、かならず性愛体験が絡んで来ます。ありていに言やぁ〝筆下ろし〟という殿方限定の青春の儀式です。その相手が、少年(青年)が秘かに憧れる年上の女性! であれば、昔も今も、巷のどこにでも転がっている、かつて性愛ジュニア小説を量産した作家・富島健夫の独壇場だったストーリーになりますけれど。

でも『壊れかけのRadio』は、ちょいと世界観が異なりましょう。

まぁ、これはね、……ハッキリ言って、解る人には解る! としか言いようがな いのですが、三島由紀夫の小説『仮面の告白』や『禁色』、詩人でいえば稲垣足穂の詩集&『A感覚V感覚』などの作品群などなど、……要するに同じ〝筆下ろし〟の性愛でも、〝男色〟の匂いを、私は濃厚に感じるのです。いや、そうとしか感じられないんですねぇ、私のような屈折した感受性の者には。

德永英明の顔立ち(あくまで当時の!)が、また、〝そっち〟好みだったりしましてね。声質もまた、……キーが高めなのに、ややしゃがれた感じが、同じく 〝そっち〟好みだったりします。

繰り返しエクスキューズしておきますが、あくまで私個人の、ごくごく私的な感覚ですから、決してこの楽曲を愛する皆さんを、どうのこうの、……って話じゃありません。

が、私はこの楽曲には、何やら、とてつもなく「不健全な闇」を感じます。 「不健全の美徳」となれば、谷崎潤一郎の『刺青』の世界でしょうが、そこまで深くはないでしょう。

『壊れかけのRadio』が大ブレイクした時期に、私の仕事仲間の1人が、 カラオケに行くと、必ずコレを熱唱しました。コイツがね、見るからに不潔な野郎でしてね。まず前歯が何本も抜けていて、残った歯も真っ黒で、口臭が酷すぎ た! んです。〝そんな〟野郎が、本人だけはイイ気になって、またバカが付く ほど大声量で、

♪~僕の身体が昔より 大人になったからなのか~♪

唄うのです。いやぁ、思い出しただけで鳥肌が立つ! おぞましくて堪らな かったですねぇ。私の中でめちゃめちゃトラウマになってしまった。その体験がなけりゃ、ひょっとして、私はもっと『壊れかけのRadio』を愛せたかも?  しれませんが。

私は德永英明を嫌ってるわけじゃあないのです。むしろ、大好きなククリに加 えているアーチストの1人です。彼のメジャーデビューは、昭和61年1月21日に 発売された『レイニーブルー』(作詞:大木誠/作曲:德永英明)ですが、これは、まさにベリグーな曲です!

♪~人影も見えない午前0時 電話BOXの外は雨
かけなれたダイアル 回しかけて
ふと指を止める
冷たい雨に打たれながら
哀しい物語 想い出した
あなたの帰り道  交差点 ふと足を止める

レイニーブルー もう 終わったはずなのに
レイニーブルー 何故追いかけるの
あなたの幻 消すように
私も今日は そっと 雨~♪

昭和歌謡の、ニューミュージック系の名曲の1つでしょう。私のカラオケの十 八番でもあります。でも、発売当初は売れなかったんですよね。何年もかかって、ようやく世間が徳永の魅力に気づいた、ってことでしょうか。

彼の高音のシャウトは、先程も書きましたが、ややしゃがれているからこそ、 魅力的です。似たような歌手は多いですけれど、〝これ〟がピタリとハマるの は、徳永だけじゃないですかね。

その証拠というわけか、彼が2005年以降、精力的に制作を続けて来た 『VOCALIST』シリーズ……。数年ごとに「ナンバー6」まで発売されました。昭和歌謡のヒット曲のうち「女性ボーカル」のみセレクトし、彼がカバー歌唱する企画は、猛烈に当たりました。

するとどうなったか? CDが売れない時代に「こんな手があったか!」 と、……他の同年代の歌手が、どいつもこいつも〝慌てて〟真似して、二番煎じ、 三番煎じのアルバムを出しましたね。でも結果的に、セールスを〝ちゃんと〟成功させたのは、徳永と中森明菜だけ! だったんじゃないでしょうか。

次回は、その三番煎じ(四番煎じ?)でくじけた、徳永より年齢でもデビュー 時期でも「先輩格」になる、ニューミュージック系の歌手、稲垣潤一を取り上げ ましょう。

 

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

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