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私バカよね

昭和歌謡_其の参

大人の事情、子供の事情

大人なんて、大っ嫌いだ

昭和歌謡史に残る名曲や大ヒット曲は、数多くありますけれど、歌詞の中に「バカ!」が連発される楽曲となると、そうはありません。

カラオケ好きの皆さんなら、パっと頭に浮かぶのは、森雄二とサザンクロスが唄った、ムード歌謡の定番『意気地なし』(1976年発売)か、細川たかしのデビュー曲にして大ヒット!! の『心のこり』(1975年4月発売)ではないでしょうか。

この楽曲が大ヒットした頃……、昭和に直すと、ちょうど50年の節目の年でしたかね。私は地元の小学校に通う6年生でした。

1回目のコラムにも書かせていただきましたが、私の生まれ育った町は、東京の最南端の一大歓楽街・蒲田です。しかも母方の実家があったのは、冗談でも何でもなくJR(当時の国鉄)京浜東北線のホームの真ん前。ウチの周りはどちらを向いても【夜の大人の遊戯】にかかわる店舗ばかり。

特に裏木戸を開けると、すぐ正面が「大人のオモチャ屋」の裏口で、さすがに教育上よろしくないと考えたのか、祖母ちゃんにはキツく、「裏木戸は絶対に開けちゃダメだよ」と何度も釘を刺されたものでしたが……。

身内の大人や教師が「ダメだよ」と子供を制する時には、かならずそこに大人どもだけがひそかに共有する「魅惑のチョメチョメ」なるものがあるはず、というのは、昔も今も、都会育ちの子どもたちであれば、さしてマセていなくても直感で【解る!!】ものだったりします。

ご多分に漏れずワタクシも、ある時、祖母ちゃんの目を盗んで禁断の裏木戸を開けたわけですね。なおかつ心臓からドッキンドッキンが飛び出すほど緊張しつつ、「大人のオモチャ屋」の裏口を開けてみちゃったり……するわけですが、この続きはまたの機会ということに。

話を昭和50年の春に戻しましょう。当時、私の両親は離婚するしないで揉めていた、ようです。のちにお袋から聴いた話によると、ということになりますが。祖母ちゃんのウチの2階に、お袋とその両親(私にとっての祖父母)、親戚のオジサン夫婦が集い、

「今度ばかりは私も覚悟を決めたわよ。あのヒトと別れるから」
「本気なんだな、佳子(仮名)?もうどうにもならないんだな?」
「なるわけないじゃない。私だって、今日まで我慢に我慢を重ねてきたんだから」

以上はあくまで私の想像、妄想です(笑)。まぁ、たいがいの夫婦の別れ話には、そんなような会話が交わされるんじゃないですかね。

肝心の親父は、そこにはおりません。あくまで欠席裁判です。まぁ、本人が同席したところで、女房筋の身内ばかりが雁首揃える前で、よほどの無頼でもないかぎり、「♪〜芸のためなら女房も泣かす それがどうした文句があるか〜♪(『浪速恋しぐれ』/歌唱:都はるみ&岡千秋/作詞:たかたかし/作曲:岡千秋)なんて、初代・桂春団治のごとく威勢の良い啖呵を切れるはずもないでしょう。

「今からここで、大人の大事な話があるから、悪いけどしばらくの間、アンタは、真美(私の妹・仮名)と外で遊んで待っていて」

お袋に命じられ、祖母ちゃんのウチの外で時間をつぶしていますと、時折、2階の窓からお袋がすすり泣く声や、親戚のオジサンが激昂する声、それを制する祖父ちゃんの声などが、漏れ聴こえてきます。出来の悪い両親に育てられると、当人から直接説明されなくても、おおよそ【大人の事情】とやらが解ってしまいます。

(ああ、今日の話し合い次第で、両親は離婚するんだな)

これは強がりではなく、本音で、怒りも哀しみもありませんでした。ただ、(僕や妹は、どっちに引き取られるだろう?)という疑問がふわりと浮かびましたかね。でも、これもすぐに、離婚の話し合いに同席する気もないような父親が、僕たちを引き取るはずもないわけで(笑)、選択の余地などないと悟るのですけれど。

ゴールデンウイーク前の心地良い南風が、ふんわりと頬をなでて、本当なら小学校の最高学年、6年生になった喜びを、同級生たちとどこかで草野球でもしながら分かち合いたいところなのに……、何の因果か、僕はひとり、4つ年下の妹と、無邪気さを装って遊んでいなければならない。

(なんてこった。どいつもこいつも、大人なんて、みんな自分勝手でだいっ嫌いだ!!)

思いっきり吠えたい衝動に駆られた時、穏やかな春の陽気の悪戯でしょうか、駅前商店街の有線放送が、風に乗って私たちのいる場所まで響いてきたのです。

♪〜私バカよねぇ おバカさんよねぇ
あきらめが あきらめが 悪いのね
一度はなれた 心は二度と もどらないのよ もとには〜♪

 (歌唱:細川たかし/作詞:なかにし礼/作曲:中村泰士)

あれから、もう43年の月日が流れたのですね。早いものです。まだ幼くて、もちろん童貞でキスすら経験のなかった私も、今や55歳の禿げナス頭。老眼もひどくて、物書きなのに細かい活字の文庫本は読めなくなりました。

男女の営みにおいて、酸いも甘いも噛み分ける……ほどの体験数はございませんが(笑)、「大人ってバカよね」という【事実】だけは、自分を省みつつ、よく認識しております。

テレビの歌謡番組などで、すっかり頭髪が××(自主規制(笑))の細川たかしが、昭和歌謡の名曲となった『心のこり』を熱唱する姿を見聞きするたびに、つい昨日のことのように、あの日の情景がリアルによみがえります。

 

 

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

 

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