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噛み癖で顔が変形!

連載の拾壱

テレビに見るスターの口の中

テレビや映画を観ていると、スターの口の中まで見えることがあります。前歯ばかりでなく奥歯の状態まで観察できれば、その人の噛み方や噛み癖がわかり、首や肩のこり、頭痛の有無なども推察できる場合があります。噛み方の偏りや噛み癖が顕著だと、顔の形に表れます。その典型例がSMAPの香取慎吾さんです。

香取さんは『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)のレギュラーを1994年4月から番組終了の2014年3月まで務めたので、口の中が見える機会が継続的にあり、図らずも歯と顔の形の観察がテレビ画面越しに20年にわたってできたのです。

はっきりした日時は覚えていないのですが、初めに「おやっ?」と思ったのはレギュラーになりたての頃で、右下の奥歯が2~3本抜けていたのが見て取れました。まだ、20歳前後と若かったのと、複数の奥歯が連続して抜けていたこと、そして治療している形跡が感じられないことに違和感を覚えたのです。

抜けてしまった原因まではわかりませんが、ほかの歯に問題があるようには見えなかったので、右下だけ複数の奥歯がないのは事故などの外傷か、ずさんな歯科治療が原因だったのかもしれません。いずれにしても、奥歯を補う治療が早急に必要なのですが、その後も抜けたままの状態が続いていました。売れっ子で忙しいとはいえ、抜けたままにしておくのは良いことではありません。やがて、その影響が顔の輪郭に表れてきました。

右の奥歯がないと右側の歯ではうまく噛めません。複数の歯がなければ余計に噛めませんので、自然と歯の揃っている左側ばかりで噛むようになります。

ものを噛み砕くのは上下の歯ですが、噛み砕く力を与えるのは顎を動かす筋肉です。それらの筋肉を咀嚼筋(そしゃくきん)と呼び、強い咬合力を発揮するのは、咬筋と側頭筋です。咬筋はエラから頬骨の部分に付いており、側頭筋は頭の側面から下顎の骨に付いています。左右に一対ずつあるのですが、左側ばかりで噛むと左の咬筋と側頭筋が発達します。鉄アレイで腕の筋肉を鍛えると大きな力こぶができるように、咬筋も側頭筋も大きくなります。特に下顎のエラの部分に付着している咬筋が鍛えられて力こぶのようになるとエラが張っているように膨らんで見え、顔の輪郭が変わります。さらに片噛みが長く続くと、鍛えられた咬筋に引っ張られて骨も変形してきます。

片噛みは顔の形を変える

偏った噛み方も筋肉の発達だけで済んでいるうちに是正し、抜けた歯の治療と共に正しい噛み方のリハビリを施せば、やがて力こぶもなくなり顔の変形も元に戻りますが、骨の変形にまで及ぶと完全に元に戻すのは困難になります。

香取さんの場合は、食事の時の左噛みばかりでなく、食事以外の時にも奥歯をギュっと噛みしめる噛み癖も見られましたので、その癖も治す必要があると気になっていました。その後、右の奥歯の治療はしたようですが、奥歯で噛みしめる癖は治っていませんでした。おそらく、彼を治療した歯科医は噛み癖に気づかなかったか、その是正の重要性を理解していないのだと思います。

抜けた歯をインプラントや入れ歯で補えば歯の数は揃いますが、長い間の片噛みで付いた悪い噛み方を是正するリハビリと、左右の歯で軽やかに噛むための微調整が必要になります。正しい咀嚼筋の使い方が顔の変形も防ぐのです。

歯科治療は、かぶせ物や入れ歯を入れたら終わりではなく、正しく噛めるようになることが本来の目的です。歯の治療だけではなく、噛み方や噛み癖の是正までできる歯科医を選ぶことが、本来の顔貌と全身の健康を守るうえでとても大切です。

 

歯科医師/林晋哉 Shinya Hayashi

林歯科
〒 102-0093 千代田区平河町1-5-4 平河町154ビル3F
https://www.exajp.com/hayashi/

 

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