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武将の愛した色

藍にまつわるお噺 其の参

褐色と共に合戦に臨む

日本のナショナルカラー「ジャパンブルー」

サッカーの各国代表ナショナルチームは、そのユニホームの色の愛称で呼ばれ、強豪国のそれは自国民だけではなく世界中のサッカーファンに親しまれている。

ブラジルの黄色「カナリア軍団」、スペインの赤「ラ・ロハ」、イタリアの青「アズーリ」、同じくフランスの青「ル・ブルー」、オランダのオレンジ「オランイェ」など。

ブラジル・ナショナルチームのカナリア/黄色

我が国日本は「ジャパン・ブルー」「サムライ・ブルー」の愛称で呼ばれる。

「ジャパン・ブルー」は、約100年前の開国直後の明治初期に、日本を訪れた英国人が「日本の青=藍の青」に遭遇し、発した言葉で、当時の日本には「藍の青」が溢れ返っていた。

また、武士の裃から農民の野良着にいたるまで、この色は使われ親しまれてきた。

江戸時代から染色の色といえば「藍色の青・紺」であり、染物屋は紺屋と呼ばれた。

近世の城下町には紺屋(=染屋)が集まり住んだ紺屋町が必ずあり、その名残りは、城下町から発達した都市、江戸城下の千代田区神田紺屋町のように、現在も全国約五十六カ所に残る住所表記で見ることができる。

戦場で咲く褐色

時代を遡れば、合戦に赴く武将が甲冑の装飾に、黒に近い藍色〈褐色/かちいろ〉を好んで用いたという。

「平安後期から武具甲冑の装飾性が強まる中で、それまでになかった色名〈褐色〉が登場する。〈かちんいろ〉〈あおぐろ〉とも呼び、黒に見えるほどの濃い藍色である。-中略-青が深く、濃く潜むかのような藍黒とでも呼びたい褐色は、〈かち〉の音が、〈勝ち〉につながることから、〈勝色〉として縁起を担がれた。そして〈褐色糸縅/かちいろいとおどし〉や〈褐色直垂/かちいろひただれ〉が盛んに作られたのである。」(吉岡幸雄『AGORA』2010)

武将の愛する褐色

編緝子_秋山徹