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小林旭&五木ひろし

昭和歌謡_其の七十六

みんなどうして いるんだろ

『遠き昭和の……』
小林旭&五木ひろし

〝やんちゃ〟が輝いていた、昭和時代

少し前のコラムの中で、小林旭が10年ほど前にリリースした『遠き昭和の……』 (平成22年4月21日発売/作詞:高田ひろお/作曲:杉本眞人)という楽曲に触れました。

この曲は、カラオケ好きのお袋が、TVの民放BSチャンネルの、五木ひろし が司会をする人気番組の中で、たまたま五木自身が歌唱したのを見聴きし、早速 うるさく電話で「すっごく良い歌を見つけたわよ。昭和の歌よ!!」とはしゃいだ ことで、私も知るに至った経緯がありまして。

正直、You-Tubeで五木の歌唱を聴いても、元来、彼を生理的に毛嫌っ ている私には、「ケッ、お前が唄う歌詞内容じゃねぇだろ!!」と反発するばかりでした。

というのも、この歌詞には、若い頃にさんざん ♪~酒とタバコと遊びに暮れ た~♪……はずの、♪~やんちゃ時代の仲間たち~♪ だからこそ、懐かしめる情景が 描かれていまして、

♪~修羅場くぐったこともある~♪ 野郎どもが、♪~喧嘩もしたさ 突っ張りもしたさ~♪

のイメージに、五木ほどふさわしくない野郎は「いねぇじゃねぇか!!」と、 まぁ、勝手に私はムクれたわけです。むろん彼のウン十年前の実状など知りもし ないわけですから、ひょっとしてアノ顔で、アノつねに慇懃無礼な物腰で、幾つ かの〝武勇伝〟ぐらいは「あった!!」のかもしれませんがね。あくまでTV画面 を通じた、私の勝手な印象に過ぎません。

ところが、この『遠き昭和の……』が、本来は小林旭のオリジナル曲であって、五木は後年、この楽曲に惹かれ、ハマり、「ぜひ唄わせて欲しい!!」と、芸能界では遥かにキャリアもスター性も格上の小林に、直談判のうえ了承を得て、カ バーさせてもらった……んですと。

皮肉なことに、小林がCDを発売した当初は、ほとんど売れず、話題にもならなかったものが、五木が唄いだしたら〝ちょいヒット〟したんですね。

YOU-TUBEで、小林旭のオリジナルの歌唱動画をチェックした瞬間、私 は、オハズカシクモ、お袋同様、この楽曲にすっかりハマってしまいました。

……どころか、風呂場でもトイレでも、暇さえあれば、♪~あの人 この人 あの顔 この顔 みんなどうして いるんだろう~♪ と鼻歌交じりに、つい唄ってしまう始末です。

ちょうど今、高校の同級生である『口腔科』ドクター・林晋哉と、歯科本を制作している中で、連日、日常会話のごとく、私たちが生まれ育った昭和時代の 〝熱かった〟季節を語りまくっていますので、この楽曲も早速、彼にメールで教えてやりました。

彼がこの曲に興味を持ったか否か? は知りませんが──、というのは、彼から、この曲の善し悪しについて、何も感想が寄せられないもので、私の方も、面倒臭いから、あえて問いかけずにいたのですが、

ある時、打ち合わせを兼ねた酒の席で、何気なく、今や私の癖になってしまっ た鼻歌を、♪~酒とタバコと遊びにくれた やんちゃ時代の仲間たち~♪ と、やらかしたら、

「ガキの時分によ、一度だって〝やんちゃ〟したことがねぇ、ヘタレなお前が唄ったって、小林旭も大迷惑だろうな(笑)。もちろん、俺もな。がははは」

大きな口を開けて、さんざん嘲笑した挙げ句、

「でもな、お前の気持ちは、よぉくわかる。蒲田に生まれ育って、優等生の紳一少年は、ママにも先公にも言えなかったけれど、ホントはめちゃめちゃ周囲の不良連中に憧れたんだもんな。やんちゃしたくても相手にされなくて、仕方なく、 四畳半2間の狭い部屋に引きこもり、愚息をシコシコ三昧の青春かぁ。それはそれで、お前の目一杯の〝やんちゃ〟だな」

はなはだ失敬なことを、ヌカしやがりました。……悔しいけれど、当たってますね^^;。そうです。私は五木に、この楽曲を「唄う資格がない」と罵りました が、何のことはない。私自身、この歌詞をマトモに唄うだけの資格など、……数十 年前の若い頃を、郷愁の念を込めて懐かしむ資格など、あるわけがないのです。

我が〝やんちゃ〟

でもね、……と、半ば開き直りで申し上げるならば、♪~酒とタバコと遊びに暮れた~♪ の歌詞の中の、こと【酒】だけは、令和3年を生きる若い連中の感覚からすりゃ、「頭がおかしいんじゃないか」と呆れられるほど、さんざん呑みまくりましたね。

文学の才は、悔しいながら親父の足元にも及ばないでしょうが、どっこい、酒飲みの才?だけは、見事に血筋でしょう。

学生時代でしたか。私同様「酒が強い」ことを自認する2人で、サントリーの ウヰスキーの「ホワイト」の瓶を2本半、一晩で呑みまくった、……のが最高記録ですかね。翌日の朝、……というか昼前ですか、2人とも「腹が減ったぁ~!!」 と、近所の旨いラーメン屋で大盛りのチャーシュー麺を食べましたから、二日酔いの文字は、当時に関しては皆無!! だったのでしょう。

いやはや、若い時分の、それこそ〝やんちゃ時代〟だからこそ、可能だった実話です。

酒の呑み始めは、中学の頃? いや小学校の高学年には、それこそ地元の、 ちょいとトッポイ連中のウチで、親に隠れてビールやら、ウヰスキーやら梅酒な ど、〝たしなんで〟おりました。

ほぼ半世紀前の記憶ですが、両親が共稼ぎの同級生のウチに、自宅で漬け込ん だ各種の果実酒の瓶が並んでいまして。国電(現在のJR)のストライキで、1 日臨時休校だった昼間、瓶の中の酒を「少しずつ飲み比べしてみよう」……みたいな話になったのです。

5人ほど、男子だけが集まりましたかね。コップに梅酒、りんご酒、レモン酒……と順に注いでは飲み干す、……うちに、私は、多少、体がほんわかし、気持ちが妙に「あっかる~い」感じにはなったものの、特に、どうってことはなかった ですが……。

他の数人が、見事にベロンベロンに酔いどれてしまいました。1人は、「気持ち悪りぃー!!」とトイレに駆け込み、1人はテンションが上ったままの状態で、 あちこち電話をかけまくりました。

何故か「3桁の番号のところに、かけまくろう」と主張し、最初は【104】 にかけ、デタラメな住所と名前を告げて、電話番号を訊く……という悪戯をしたわけです。その番号が、電話の故障ダイヤルに変わり、電報ダイヤルに変わり、…… しているうちに、何がどう〝そう〟なってしまったか? 中国大使館に電話して しまったんですね。

おそらく当時の日本の総理は田中角栄で、中国との国交が正常化し、その証として、上野動物園パンダが「やって来た」……、その数ヶ月後、ぐらいの時期で しょう。

自分では少しも「酔っている」自覚のない私が、当時、意外に得意にしてい た、田中角栄の口真似で、「えー、田中角栄だがね、中国のマンチョンチン大臣 に、至急、連絡したいことがあってね」と、やらかして、ガチャンと電話を切っ た──のです。トイレの便器と格闘している1人を除き、大爆笑の嵐。

30秒もしないうち、目の前の電話機がけたたましくベルを鳴らしたのです。一 同ギョッとなり、無視することにしました。ところが鳴り止んだはずのベルが、 また鳴り始めます。またも無視すると、ほどなくベルがまた。

仕方なく、そこのウチの息子が、へべれけの口調で受話器を取ると、しばらくして彼の両目から涙が……。泣きじゃくりながら「スミマセン、スミマセン、……」 と謝っています。私が受話器に耳を近づけると、低い男の声で、「君のウチの両親を出しなさい!!」と命じていました。

このままじゃ埒が明かぬと思った私は、受話器を受け取り、相手の話を聴けば、要するに、お前たちのしていることは、国際政治上はなはだ由々しきこと で、一歩間違えば、せっかく結んだ日中国交の正常化が、ご破算になるやもしれぬ、と。「これは重罪であり、君たちが未成年なら、そこのウチの親が責任を とって、場合によっては刑務所に入らなきゃならなくなるんだぞ!!」……と。

今思えば、完全な脅しでしょう。ガキの分際で、ふざけたことをしやがったため、キツくお灸をすえられたわけですね。

でも私は、このままでは、本当に同級生の親が警察に捕まるかもしれない!?  と怯えたものですから、小賢しく一計を案じました。全ての責任をトイレで苦しんでいるヤツ1人の仕業にし、「事件の張本人はヤバイと感じて、さっき逃げ出 しました。どこへ行ったか? わかりません。今回だけは許して下さい」……と電 話口に向けて謝り続けたのです。

私の〝にわか芝居〟の出来が良かったか否か、詳細は不明ですが、「二度とこんなことをするんじゃない!!」と、最後に大声で恫喝されて、電話は向こうから 切れました。

まぁ、この時の酒での失敗を皮切りに、数え上げたら切りが無いほど、私と酒 とのエピソードは多々、ございます。

ただし酒乱と化した親父と異なり、……いや、親父のヘベレケの〝ていたらく〟 を、幼い頃にあまりに観まくり過ぎた、そのトラウマでしょうか? 私は決して酔いどれて、他人様に迷惑をかけることは、ほぼ一回すらなかったはずです。

あ、いや……、思い返せば、すでに他人様とは言えぬ、わが最愛のカミサンに二 度ほど、ドライブインで本気に〝捨てられそう〟になった過去はありますが、…… まぁ、これはすでに時効ということで。

『遠き昭和の』

♪~あの人 この人 あの顔 この顔
みんなどうして いるんだろう
酒とタバコと 遊びに暮れた
やんちゃ時代の 仲間たち

あの歌 この歌 あの夢 この夢
今も覚えて いるだろか
安い酒場で 酒酌み交わし
語り明かした 夜もある

喧嘩もしたさ 突っ張りもしたさ
遠き 昭和の まぶしい時代~♪

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

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