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お口の健康

連載の参

口のシステム

口が健康であるということ

前回の記事では、全身の健康は口の健康が支え、その口の健康に良くも悪くも大きく影響するのが、かみ合わせだと説明しました。
では、口が健康であるとは、どういう状態を指すのでしょうか。

自覚的には、「口を意識することなく社会生活を送れること」であり、他覚的には「口に関する各器官に異常がなく、スムーズに連携して機能していること」といえるでしょう。

たとえば、歯が抜けたままだったり、痛む歯やしみる歯などがあれば、食事のたびに口を意識しますし、また、あくびをする時に顎関節に音や引っ掛かり、痛みがある人は、あくびをするたびに顎を意識します。そして程度が重ければ、食事やあくびをすることに恐怖を感じ、噛まなくても食べられるものや食べてもしみないものだけを選んで食べたり、あくびを噛み殺すなど、明らかに生活上の制限が生じます。

これらの制限を受けた口は、いわば偏った動きを強いられている状態です。このようなストレスは口の健康を損なっていきます。

口を構成するもの

口は顎・口腔系としてとらえる
口を構成している要素は、大きく分けて(1)上顎、(2)下顎、(3)歯、(4)頬、(5)舌、(6)口蓋(上あご部分)、(7)顎底(舌の下の部分)です。

この中でも歯は特殊で、人体の中で唯一外に出ている骨といえるもので、ほかの要素と違って非常に柔軟性に欠けるものです。

そしてもうひとつ。口を構成する要素ではありませんが、口が機能するためには欠かせないのが顎関節です。これも特殊性があります。通常、ひとつの器官(手、足など)を動かす関節部はひとつですが、口は2つの顎関節部で動かします。これにより、口の可動域が飛躍的に大きくなり、さらに複雑な三次元の動きがスムーズにできるようになります。たとえば、あくびなどで最大に口を開けているときは亜脱臼(脱臼寸前)の状態で、これは2つの関節を持っているからこそできるといえます。

一般的な口の動作イメージは、上下の顎が動いて歯を噛み合わせ、咀嚼やその他の動きをしているように思えますが、実は上顎は頭蓋骨に固定されているので動かず、下顎だけが動いて口の機能を果たしています。

このように、口を考える時は顎関節を含めてとらえなければなりません。我々歯科医が取り扱う領域は、歯だけではなく「顎・口腔」であり、歯はその中の重要な要素のひとつとしてとらえることが大切なのです。これに顎・口腔に付随する筋肉群や神経などが加わり、口が機能するためのいわゆる物質的な要素が揃います。しかしながら、このままでは口いっぱいにモノが入った状態から髪の毛一本をより分け、口から出すような神業のごとき振る舞いはできません。

口は咀嚼のみならず

口を機能させるためには、各要素を連動させ働かせるシステムが必要です。それを現状では「咀嚼システム」と呼んでいます。なぜ現状という言葉を付けたかといえば、先にも述べたように口は咀嚼のみではなく、さまざまな働きをする器官だからです。「顎・口腔システム」とでも名付けるほうが適切ではないでしょうか。

これまでの学問体系では、構成要素とそれを機能させるシステムをまったく別のカテゴリーとして扱ってきましたが、構成要素とシステムが相互に影響を受け、日々変容しているとしたらどうでしょうか。

たとえば歩行について考えてみると、ハイハイに始まり、これに熟練してくるとつかまり立ちができるようになり、ついには一歩を踏み出します。つまり、日々の活動により時間と共に骨格、筋力、神経などが発達し、その程度に応じた動きを学習、習得し歩行ができるようになります。言語の習得も同じです。親など周りの話している言語をずっと聞き、最初は意味も何もない音を発しますが、時間と共にこれらを意味ある言葉に変えていきます。

なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか。

それは、歩行や言語を司るシステムも、その習熟度にあわせて発達していくからです。その都度違うシステムを使うわけではありません。日々の変容に合わせて連動したシステムづくりが行われているのです。

咀嚼システムも同じです。口を考える時は、構成要素だけではなくそれを機能させるシステムも同時に考えなくてはなりません。だからこそ口は顎・口腔という要素とシステム系を一緒にし「顎・口腔系」としてとらえることが必要なのです。

次回からは、この咀嚼システムの学習、発達、成熟に特に大きな役割を果たすものが「かみ合わせ」だということをさらに追っていきたいと思います。

 

歯科医師/林晋哉 Shinya Hayashi

林歯科
〒 102-0093 千代田区平河町1-5-4 平河町154ビル3F
https://www.exajp.com/hayashi/

 

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