和更紗の技法
そもそも更紗って何_ 其の四
三種類の技法
描き更紗
和更紗の技法は大きく分けて三種類
「描き更紗」
「型摺り更紗」
「型摺りと木版併用更紗」がある。
「描き更紗」は「手描き彩色更紗」ともいわれ、顔料や染料を綿布に直接、筆などで手描き彩色する方法で、インドやシャム更紗が代表的なもの。
江戸時代すでに、前記の『佐羅紗便覧』などに記されている嚥脂綿、雌黄、藍蠟など、高価な輸入染料が使われていた。
しかも金布(かなきん)といわれる、インド産の細手の糸で織られた上質な木綿を用いた。しかし、手描き更紗は手間がかかり、量産できない。
型摺り更紗
これは、群青、藍泥、弁柄、黄土などの顔料や、蘇芳、などの染料を10枚以上の型紙を使って直接刷毛で、摺り込むという方法で、「追っかけ染め」ともいわれる。
摺紙を柿渋で貼り合わせて文様彫りをした型紙は、その頃小紋染めや中型染めに使われた伊勢の白子で主に彫られていたが、京都でもオリジナルの京型紙が作られた。
しかし、この染め方には欠点がある。
「合わせ星」といわれる、一ミリほどの小さな点が等間隔に入ってしまう。
これは文様付けの際に型紙を移動させて見当を合わせるための目印なので仕方がない。
地色を染める場合は一枚型ではできないので、二枚以上の型を使用する。そのために繋ぎの部分に重なりができたり、白が出る。
また、顔料は布に浸透して染まるのではなく、表面に付着するものなので、裏側は白地のままとなる。
更に、この型摺り更紗の最大の欠点は、顔料を使用するので耐水性が悪く、水を通せば退色すること。
しかし当時の人たちにとっては、これらの欠点を越えて、顔料の色の鮮やかさから生まれる、それまでには見られなかった色彩の文様布は新鮮さに満ち、大きな魅力を感じたことだろう。
型摺りと木版の併用
「型摺りと木版の併用」の技法は、九州の鍋島更紗に見られるもので、一子相伝の『更紗秘伝書』に書かれている。輪郭線の黒に木版を使用し、次に型紙の摺り込みで五色ほど摺り、最後に赤の線に木版を使うという技法。