世界の更紗
そもそも更紗って何_ 其の参
インドから世界へ、独自の文様
ペルシャ更紗
中世以降、回教のインド進出にともなってペルシャとインドとの交流が頻繁になると、インドの更紗の技術を習得するために職人たちがペルシャからインドへ入り、ペルシャ向けの製品を作るようになる。
やがて本国へその技術を持ち帰り、イスファハンなどではインド更紗と同じレベルのものができるようになった。
技法的には木製ブロックを使用する方法。文様の方は、イスラム文化独特のアラベスク文様を反映した幾何学文様や、聖樹文様、鳥獣文様、花唐草文様、ペイズリー文様などがある。
ヨーロッパ更紗
インド更紗の美しさは、フランス、スイス、オランダ、イギリスなど、ヨーロッパ人をも魅了した。
インドから伝承された木製ブロックによる高い技術の更紗染めは、西北アジアからの優秀な職人の力を借りて、本格的に始められたが、地元の職人の仕事を奪うようなこともあり、更に、インドからの木綿布も輸入過多になるなどの問題も起きた。
やがて産業革命が起こり、木版捺染に替わって銅版による機械染めが開発され、細かな文様が表現できるようになり、文様は立体感や遠近感のある、写実的なものへと大きく変化していった。
幕末には日本へも、オランダ船によって「オランダ更紗」 「ヨーロッパ更紗」と呼ばれる銅版更紗が舶載された。
文様も、日本向けの小花、小鳥、扇子などの組み合わせで、しかも色数が多く、繊細な更紗なので、現在でも日本の女性の間で人気が高い。
シャム更紗
シャムは現在のタイ国。シャム更紗は日本では砂室染めなどと呼ばれていた。
16~17世紀にはシャムの王室がインドに更紗を発注するようになり、この更紗の一部が紅毛船を通して日本へも運ばれてきた。
その固有の文様は宝珠形花文や火焔形、菩提形(日本では「仏手」と呼ばれている)などがあり、濃い臙脂に白く染め抜かれた、白糸目ともいわれる細密な手描きの細い線で表現されているものが多く、仏教と関連のある文様も多い。
ジャワ更紗
蠟防染技法による更紗でインドネシア独特の更紗。通称「バティック」という。チャンチンという用具を使って両面に蠟置きする手描き更紗と、チャップという銅製の押型を使って量産する更紗の2種類に大きく分けられる。
文様も地域によって特色があり、インドネシア中部では茶褐色と藍で幾何学文様化された抽象的なパターンの更紗が、北部ではインドや中国、ヨーロッパの影響を受けた鮮やかな色調の動物や花柄が多い。