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令和二年 雨水

2020年2月19日

変わりゆくもの

雨水_雪が溶けその水が養分となって田畑を潤す

雨水は、春の芽吹きの準備の時期である。

古来、農耕作業もこの時候から本格的な準備に入ったという。

雪解け水を〈雪消(ゆきげ)の水〉、それが田畑を潤して〈雪汁(ゆきじる)〉、奔流になると〈雪代(ゆきしろ)〉、川や海を濁すと〈雪濁り〉となると云う。

雪が溶けて流れて変化するように、この時期も色々なものが大きな流れとなって変化している。

第92回アカデミー賞

2月9日に行われた第92回アカデミー賞で、韓国映画ポン・ジュノ監督作品 『パラサイト 半地下の家族』が、外国語映画賞・作品賞・監督賞・脚本賞の4部門の賞を獲得した。

米国以外の優れた海外作品が受賞する外国賞の受賞歴は、これまでも日本やアジア諸国の作品でもあったが、作品賞・監督賞・脚本賞という主要部門で、米国の母国語である英語以外で作られた映画がノミネートされ、かつ受賞するというのは昨年第91回のメキシコ映画アルフォンソ・キュアロン監督作品『ROMA』が監督賞・撮影賞を獲得したのに続くもので作品賞・脚本賞は史上初となった。

主演・助演賞の俳優部門以外の作品・脚本・監督の作品部門の主要な賞を獲得したということは、作品として非常に高い評価をされたということである。

ここにアメリカという国の持つ、寛容さという一面が出ている。

しかし一方、今回主要部門で最多の28作品がノミネートされたNETFLIX制作の作品はノミネートの数に比して少なく、レジーナ・キングが 『ビール・ストリートの恋人たち』で助演女優賞を受賞したのが主要部門での受賞となった。

有料動画配信のNETFLIX作品を映画と呼ぶのか、映画館で配信されていない作品を映画として評価するのかという論議がアメリカでも起こっているという。

それはそうであろう、映画館という特定の場所で大スクリーに映し出されるものが、私たちの映画に対するイメージである。

しかし、NETFLIXは豊富な資金力で既存の配給会社を凌駕し、大作を量産している。

今回作品賞や監督賞など10部門にノミネートされたマーティン・スコセッシ監督作品『アイリッシュマン』もNETFLIX制作であるが、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルなどの名優が出演するこの作品は、大手制作会社が資金を投入できない中、NETFLIXが出資してようやく完成されたという。

スケールにおいてやはりこれは映画であろうが、映画館にかけられていないという点(米国や日本など数カ国で限定的に映画館で公開されたが基本的には動画配信を目的として制作されている)で、これから議論の必要性が出てくるのだろうか。

映画界における大きな流れの変化である。

COVID-19/コロナウィルス

収束どころか感染拡大の様相を呈してきたCOVID-19/コロナ・ウィルス。

日本の現状を見て次期ロンドン市長選候補者が「東京オリンピック中止」を提言し、その場合の代替として「ロンドン・オリンピック開催」を公約の一つに掲げるというニュースまで流される始末である。

特に国際社会が日本の感染症対策を懸念しているのが横浜港に停泊している「ダイヤモンド・プリンセス号」内の感染拡大である。

多国籍の乗船客が3000人規模で乗船しているこの船内の感染症の日本政府の対応と経緯が、国際社会の注目の的となっている。

そんな中、感染症予防の専門家(神戸大学岩田教授の)という方が、乗船した際の顛末と『ダイヤモンド・プリンセス号はCOVID-19製造機だ』という見解を2月18日にYouTubeで日本語と英語で発信した。

この発信内容が19日には国会の予算委員会で取り上げられ、野党が教授にヒアリングした映像がYouTubeで配信された。

また海外のメディア、イギリスBBCや米国CNN、ニューヨークタイムス等が教授に取材し、本国で放映、記事にした。

20日には、厚生省の担当者がFAcebookで教授に反論するなどして、喧しい。

感染症の知識のない私が、専門家の教授や厚生省の説明に、ここで言及するつもりはない。

また、政府が悪いとヒステリックに騒ぐ必要もないと思うからである。(もっとも厚生副大臣が噴飯もののツイッターをあげていたので、大丈夫かいな、とは思う)

ここで問題なのは、国の情報発信・公開の姿勢である。

他国籍の乗客が乗船する「ダイヤモンド・プリンセス」のコロナ・ウイルス感染症に関する積極的な情報公開が、国際的に求められているところであるが、日本政府には細かな情報公開をする姿勢はみえない。

不都合なことも含めここで発信することが、国際的な信用を得ることだと思うのだが、それが無いために自国民が乗船している国の政府は苛立っているように感じる。

そこに、乗船した(乗船2時間で降ろされたらしいが)感染症の専門家が「船内の感染症対策が杜撰である」という

報告をしたものだから、BBCやCNNといた大メディアがこれを報じた。

日本政府は、万全な態勢で臨んでいるというが、海外メディアの納得する情報を提供していたら、こうはならなかったはずである。

教授の報告が正しいかどうかは、私には分からない。

しかし、この報告内容が誤っていたら、日本という国はこと感染症対策においては信用のならない国となってしまう。

国益を著しく損なってしまっているという危機感を政府は持っているのであろうか。

私は、日本が世界に冠たる経済大国である必要はないと思っている。

しかし、国際社会に恥を晒すのは勘弁していただきたいと思う。

もちろん感染症対策の専門家である教授の発信した報告であるから、取り上げられたのだとは思うが、YouTubeやTwitter、FaceBookなどのSNSが公的な情報発信のツールではないが故に、発信内容の信憑性というものが損なわれれば、凶器になると痛感した。

時代は、溢れる情報の中から真の情報を選択する能力が求められる『情報選択の時代』に大きく流れを変えている。

この大きな流れとは、全く趣の異なる慎ましやかな変化ではあるが、当HPも2年強で50回以上の更新を重ねた。ここでHP自体のスタイルを一新させる予定である。

能力の低い編輯子が事に当たるため時間を要する。

したがって、次回の『啓蟄』の更新はお休みして『春分』の更新の一新したHPで皆様とお会いしたいと願う_乞うご期待!

編緝子_秋山徹