令和六年 白露
G7で最低
水はまだですか
伝える自由
白露_草木の葉に落ちる水の玉、霜は昼暖かく夜冷えるこの時期になると結びやすい。日が射すと蒸発し、葉を揺らすと落ちてしまうため、儚いものの例えとなる。
非常にあゆみの遅い野分、台風10号がゆっくりと日本列島を縦断した。多摩川の河川敷のグランドは軒並み水没し水たまりとなった。週が開けた今は野球グランドは練習が始まっているが、ラグビーのグランドはローラーがけが真っ盛りである。保育園児たちはまだやってこないのが、淋しい。
パラリンピックも真っ盛りで開催されているが、こちらはオリンピックと比べるとあまりにも報道が少ないのが不満である。
最近、日本のマスコミ報道全般に不満を感じていたら、日本の報道の自由度が主要7カ国(G7)の中では最低であることを知った。
5月3日、国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)英国支部は2024年度の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180カ国・地域のうち日本は70位と前年68位から2つランクを落とした。主要7カ国(G7)の中で最下位である。
1位がノルウェー(昨年同)、2位デンマーク(同3位)、3位スウェーデン(同4位)と上位3カ国は北欧諸国が占めた。
G7ではドイツ10位(同21位)、カナダ14位(同15位)、フランス21位(同24位)、英国23位(同26位)、イタリア46位(同41位)、米国55位(同45位)であり、日本は70位(同69位)とダントツの最下位である。。
「国境なき記者団」の日本評は次の通りである。
(参照「国境なき記者団」HPより/https://rsf.org/en/country/japan)
総評
日本は議会制民主主義国家であり、メディアの自由と多元主義の原則が一般的に尊重されている。しかし、伝統やビジネスの利益、政治的圧力、ジェンダーの不平等により、ジャーナリストが監視役としての役割を完全に果たせないことがよくある。
メディア風景
従来型メディアは依然としてニュースサイトよりも影響力がある。主流の新聞や放送局は、 読売、 朝日、 日本経済、 毎日、 フジサンケイの5大メディア複合企業によって所有されている。 読売 と 朝日は、それぞれ1日あたり620万部と360万部を売り上げ、世界で最も多くの新聞発行部数を誇っている。一方、 日本放送協会(NHK)は世界最大の公共放送局の1つである。
経済的背景
国内では依然として紙媒体が主流だが、世界で最も高齢者の割合が高い国である日本では、読者数の減少により紙媒体の将来は不透明だ。日本では新聞社と放送局の相互所有を規制していないため、メディアの集中が進み、記者が2,000人を超えることもあるかなり大きなメディアグループが成長している。
社会文化的背景
日本では政府や企業が主要メディアの経営に日常的に圧力をかけており、その結果、汚職、セクハラ、健康問題、公害など、センシティブとみなされる可能性のあるテーマについて激しい自己検閲が行われている。
要するに日本ではマスメディア、メディア複合体に報道の場が集中しており、その中で限られた巨大企業が自己検閲を行なっているため自由度が少ないのである。中でも大きな弊害は、アメリカなどでは法律で禁じられている新聞社と放送局の相互所有である。ひと掴みのメディア複合体の報道姿勢によって大方の報道がの方向性が決まってしまい、偏ったバイアスがかかって偏向報道がなされ自由度が毀損される。報じられるべき情報が、企業のイデオロギーと自己検閲、政府の圧力により簡単に葬り去られている。
最近の良い例が、終了した東京15区衆議院議員補欠選挙と東京都知事選、そして今喧しい自由民主党総裁選挙では、ある一定の候補者が恣意的にテレビ、新聞の報道で無視され、あたかも存在しないかのような扱いを受けている。
具体的には、自由民主党総裁選挙で青山繁晴参議院議員が出馬記者会見したにもかかわらず全く無視され。あまつさえ各放送局のニュース番組や新聞記事では、出馬会見すらしていない議員を含めて11名の候補者の写真と名前を挙げるが、その中に青山議員のアの字も出てこない。こんな報道をしていては自由度もクソもないだろう。
まさに「国境なき記者団」の日本評—伝統やビジネスの利益、政治的圧力、ジェンダーの不平等により、ジャーナリストが監視役としての役割を完全に果たせない—そのものである。
災いのあとの報せ
先日、能登半島地震で被災した和更紗の染め職人Nさんから現状を聞いた。震災で彼の自宅と仕事場の工房はほぼ全壊となり、夫婦で近隣の避難所から、二次避難で離れた温泉街のホテルへ、そして行政が用意した金沢のアパートへと移り落ち着いたが、やっと仮工房の目処が着いたのが8月、つい最近のことであるという。
一旦落ち着いて仕事も再開する目処もついたが、ほぼ全壊した家屋と工房がそのままであるが、公費解体の制度を使って更地にして、再び家屋と工房を再建したいと思っているそうである。しかし、事はそうスムースには運ばないようだ。以下は彼からのメールをそのまま転記する。
—公費解体は、先日ようやく三者打ち合わせ(コンサル・解体業者・私)があり、早ければ10月頃、遅ければ来年以降になるとのことでした。
解体に向けての家財出しや分別などがある為、金沢と輪島を往復しながら仮工房の整備を進めている日々です。
公費解体の遅れは、様々な理由があるようですが、初動が遅れたのは、結局「お金」だそうです。国が示した条件と解体業者の協会の合意に時間がかかったそうです。地元の土建屋さんが言っておりました。あの条件では解体業者はやりたがらないと。
私の住む町野町は8月に入ってようやく何軒か解体し始めました。
地理的なことや業者さんの宿泊施設がないことも大きな要因のようです。
政府の支援策とはこの程度のものなのかとがっかりする。また、電気・ガス・水道のインフラ関係を訊ねると
—水道も地区によってはまだ通ってないです。町野町のすぐ上にある珠洲市真浦地区の方々は未だに町野町まで水を汲みに来てます。
珠洲市から水道を復旧させるのが困難になり、つい先日ようやく市を跨いで輪島市町野町から水道管を延ばすことが決まったそうです。これはさすがに呆れました。
震災後八ヶ月間が経っても水さえろくに届かないという状況に唖然とする。八ヶ月経ってもライフラインも整備できぬ日本という国ははたして先進国と呼べるのか。大阪でふざけた万博などやっている場合か。
国民の一部であれ、最低の生活の営みができぬという地域があるのにもかかわらず、祭りを優先する神経がわからぬ。
こういった震災地の現状を報道し続けて問題提起をしながら、政府の支援策の不備を訴え、政府支援の監視をして行くのがメディアの本来の使命ではあるまいか。
23年度政府予算で約10兆円が余剰金として余ったそうである。5兆円は国債の償還に当て、残りの5兆円は発行予定だった国債分に充当したという。5兆円は復興支援に回せぬものなのか。メディアには5兆円を復興に回せという一大キャンペーンをはるくらいの気概を持って欲しいと願うが—
まあ無理な話であろうな。
編緝子_秋山徹