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令和六年 冬至

2024年12月21日 ~ 2025年1月4日

かの友垣

オールドメディア

情報源

冬至_太陽の位置が一年で一番低くなり、昼短く夜長い日。

2日前の12月19日、西日本各地と東京都心で初雪を観測したというニュースが、ネットのヘッドラインにあった。東京では例年よりも15日早いそうである。雪という字面が、冬至という冬の時候の景色に色を添える。

このように雪が降ったという映像とニュースは、ネットのSNSであれ、テレビ局のニュースであれ素直に情報として受け入れることができる。「西日本・都心の各地で雪が降った」という映像を恣意的に編集してねじ曲げる必要がないからである。

昨今、マスメディアであるテレビ局や新聞社の偏向報道が話題となっている。特に政治に関連するものが多いようだ。
東京15区の衆議院補欠選挙に始まり、東京都知事選、自民党総裁選、衆議院総選挙、アメリカ大統領選で数々の偏向報道がなされた。
他方、ネットのSNSなどで情報を得る人が増えて、この両者の情報が時に真逆であることも多く錯綜している。既存のマスメディアはオールドメディアと呼ばれ、オールドメディア対SNSという構図が出来つつある。

当然、オールドメディアの番組や記事が偏向報道であるかどうかは、個々人によってその判断は違うだろう。一方、SNSの情報は石玉混合、デマ・落書きに近いものから、オールドメディアよりももっと恣意的なもの、正しい情報とその解説などのコンテンツが混ざり合って膨大に存在する。

オールドメディアとSNSの報道の違いが如実に現れたのが、斉藤元彦兵庫県知事に関する一連の報道であった。三月下旬に兵庫県のメディアや県議会議員に対し送られた〝怪文書〟もしくは〝公益通報〟を発端として、オールドメディア(当初はSNSも)は、文書内にあった斉藤知事のパワハラ、おねだり案件というものを連日、ワイドショーなどで論(あげつら)い、半年以上に渡り斉藤知事の人格攻撃をした。やがて議会は全会一致で知事の不信任決議を可決し、斉藤知事は議会解散ではなく失職を選択した。

潮目が変わったのは、新知事を選ぶ選挙が始まったあたりであった。文書にあったパワハラやおねだり案件(もともと知事が辞職するほどの案件とは思えぬが)やその他の案件の証拠が出てこないこと、故人となった告発者の資質に疑義が生じてきたことが、SNSで発信されだした。もともと失職するまでの県政の評価が高く、また斉藤前知事を応援するために立候補した候補者の影響も大きくあり、斉藤前知事は二位に大差をつけて当選し、再び知事となった。

この一連の報道の中で、私の判断の基準となったネットの情報が二つある、

ひとつは「リハック/ReHacQ」というYouTube番組が、失職したばかりの斉藤前知事へ行なった二時間にわたる主催者との1対1のインタビューである。二時間1対1で話す映像を見れば、自ずとその人物の為人(ひととなり)というのは、話し方と表情、動作に出て概ね自分なりに判断できる。だから、このインタビューの斉藤前知事を見た時には「あれっ」と思った、この人間は嘘をついていないのではないかと、少なくともパワハラをするようなタイプには見えなかった。これがテレビではそうはいならない。番組放送時間の尺の問題で10分の放映されれば良いほうだろう。しかも、好きなように編集できるため印象操作が可能である。YouTubeなどのネット番組では時間の制限がなく映像を流せるのが強みである。

二つ目の情報は、これもYouTube動画であったが、斉藤前知事の選挙運動に中学高校時代の同級生80名が手弁当で手伝っているという報道で、実際に選挙を手伝う同級生数名が「斎藤はパワハラするような奴じゃない」とインタビューに答えていた。斉藤元彦47歳。同級生は皆それなりに仕事の一番忙しく責任ある年代である。それが、17日間毎日とは言わないが、各々来れる時に来て手弁当で手伝ってくれる。我が身に置き換えてみれば一目瞭然である。もし私がこの立場だったら、一人二人来てくれれば御の字である。いや、それさえ危うい。高校を卒業してから約40年を経てなお、80名が応援にやってくる。甘いかもしれないが、この一点のみにても私は斎藤前知事は失職に追い込まれるほど人格的に問題があるとはどうしても思えなかった。

まあ、兵庫県民ではないので、私がどう判断しても投票結果に何の影響も及ぼさないのだが—

しかし、半年以上も斎藤知事の人格攻撃をやり続けていたテレビ局・新聞社とは一体何なのだろう。誹謗中傷雨霰である。それが当選後も未だに続いている。無茶苦茶である。
ここで我々はふと思う。このテレビ局の報道姿勢は今に始まったことではないだろう。今まで私たちはどれだけ歪められた情報を与えられてきたのだろうか。背筋が凍る思いがしたのは私だけではないはずだ。

小さな誤報

テレビ局とは違い。新聞記事というのを、私はかなり早くから信用していなかった。

それは私が高校二年生17歳の時だった。
三年生に生意気な奴がいた。
(二年坊が三年生を生意気という時点でちと難があるのだが—)
その三年生が「パチンコで10万以上勝った」と辺りに吹いていた。(今と違ってパチンコで10万というのは当時では額が大きすぎる。)
あの野郎吹きやがってと思っていた矢先の放課後、当の本人が仲間数人と屯しているるところに出会(でくわ)した。

私よりも先に友だちが「パチンコで10万だあ、てめえ、ほら吹いてんじゃねえよ」と啖呵を切った。相手も「何だコラァ」と返し、その場で殴り合いになりそうなった。校内じゃヤバイというので、場所を近所の神社の境内に移したら、移動中に互いの仲間の人数が増えて、気が付いたら団体戦になっていた。

誰が口火を切ったのか乱闘が始まって、やや人数に劣る我々二年生が劣勢となった。ヤバイと思ったところに、工業高校の不良の一団が通りかかった。〝運悪く〟その一団は私の中学時代の同級生達だった。当然彼らは我が軍に加勢した、が、奴らは加減というもの知らない。形勢は決したのに攻撃を止めず、ひどい怪我をした三年生が出た。やがて近所の住人が110番して救急車も来る騒ぎとなった。工業高校の連中はパトカーが来る前に逃げたが、同じ高校で面も割れている我々は逃げる訳にもいかず全員が補導された。(二年生も三年生も、どこかの不良が加わってきたが、どこの誰だか知らない、と答えたため工業の奴らは捕まらなかった—実際、どこの誰かを知っているのは私だけだった)

これが翌朝の新聞に出てしまった。大手新聞各社と地方新聞に「高校生乱闘で重傷者」という見出しの小さな記事であった。

まあ、警察発表をそのまま書いてあるので皆同じ文面で、喧嘩の原因は「三年生がパチンコで10万円勝ったというのに二年生がイチャモンをつけて」となっていたが、1社だけは「パチンコで10万勝ったと吹いたのが二年生で、それにイチャモンつけたのが三年生」と書いていた。読者にとってはどちらでも良いことだろうが、当事者にとっては大問題である。我々二年生の立場は、パチンコ(そもそも17歳でパチンコは違法である)で10万勝ったとホラを吹き、上級生がそれにイチャモンをつけたら乱闘を起こし、重傷者まで出したと、最悪である。
高校生が乱闘を起こして重傷者を出した、というのがメインで重要なのはわかるが、1社だけは確実に〝事実〟を伝えているわけではない。同じ警察発表を聞いても人によっては違う記事となるのだと、この時知らされた。

以来、新聞記事を百パーセント信じるのを止めた。

編緝子_秋山徹