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お口の医者 林晋哉 その二

昭和歌謡_特別編②

昭和歌謡コラムの特別編・その2

入れ歯をハメた歯医者による、200%本音だけのお噺

前回に引き続き、わが高校時代の同級生、〝お口〟の専門家=自称「口腔科」 ドクター・林晋哉の紹介をさせてもらいましょう。

彼とコンビを組んで、現在、(仮タイトル)「目からウロコの、お口の噺」と いう本の制作を進めています。

この本の、どこが「目からウロコ」かと言いますと、まず本の内容が、過去あま た刊行された医療本には、ほとんどなかったはずの、全編、私が根掘り葉掘り、 林へ「インタビューをしまくる」スタイルで構成されることでしょう。

林とは、正直、40年ぶりに〝奇跡的な〟再会を果たしたのですけれど、ウン十年、公私ともに何ら接点がなかった2人でも、そこは元同級生のよしみ、お互い、東京の下町のはずれ、場末町育ちの「野郎同士」ですから、発言に何1つオ ブラートが被さりません。何1つタブーもありません。

なおかつ口調はベランメェ。本人は「俺はいたって丁寧、優しい口調で話すだ けよ」とのたまいますが、文字起こしの際に、AIの変換ツールを用いたくて も、言葉の発し方が、ほぼすべて巻き舌なので、変換不能(笑)。結局は、人工 頭脳に頼らず、逐一私が書き起こさねばならなくなりました。

──歯学部の偏差値って、やっぱり医学部より低いの?
林 あったり前じゃねぇか。大概の歯学部の学生は、本当は医学部に入りたかっ たものの、勉強で落ちこぼれてしまい、仕方なく歯学部を受験するんだよ。

──偏差値トップの東京医科歯科大学と、最下位の奥羽大学、晴れて歯科の国家試 験に合格しても、歯科医の技量とすりゃあ、かなりの差が生じるのかね?
林 基本的に、歯医者のクリニックの看板を掲げているヤツの技量に、そこまでの違いはないよ。簡単な話、奥羽を出ても半分は歯科医になれない。つまり国家試験に受からない。東京医歯は、すべて歯医者になる。その違いは、確かにある けれど、国試(歯科国家試験)に受かって、臨床経験を積んだ歯医者であれば、 基本的に一緒だよ。そんな、つまんねぇこと、俺に訊くな(笑)!!

でもね、歯医者は医者扱いされていないのも事実だ。

──何故?
林 要するに、口が疎かになってるんだな。でも、よく考えてみろや。口は一番 大事なんだよ。口が、胃や肺や心臓などの、一般人にとってわかりやすい部位よりも、はるかに〝格下〟扱いされてるわけ。それっておかしいだろ? だって人 間、どうやって生きてるんだよ?

──そりゃあ、口でモノを食べるってこと?
林 だろ? 人間に関わらず、動物はすべて口から栄養を摂取する。口に食べ物 を入れたら、歯と舌で細かく咀嚼し、喉の奥へ流し込む。こんな重要な生体器 官って、他にねぇだろうがよ。俺はね、人間の活動の中で、咀嚼ぐらい重要視さ れるべきものはない、と考えるんだ。より良い咀嚼のためには、上下の歯の噛み 合わせの調整が重要でね。ほんの少し、歯の先が欠けたって、噛み合わせが狂う んだよ。

昨今、巷で話題のコロナのワクチン接種。対応できる医師の数が足りないな ら、「どうして歯科医に任せない?」と、林は憤ります。町の歯医者は、治療時 の痛みを抑えるため、歯茎に麻酔を打つのは「通常業務だと。つまり歯科医 は、町の内科医なんかよりも、よっぽど「注射が上手い!!」んだそうです。
その証拠みたいな、まさに「目からウロコ」の〝実話〟ですが、かつて、林が 歯学部の学生だった時分は、歯学部を出ても、普通に「麻酔科の医師」にだけ は、なれたんですって。

──現在は?
林 NGになっちまった。理由はね。ある時期にさ、某大学病院だと記憶してい るけれど、外科の手術中に医療事故が生じ、患者が死んだんだな。麻酔医には何 一つ責任がない。ところが運悪く、その手術の担当麻酔医が歯学部出身だ、ってんで、患者の遺族は「歯医者ごときに麻酔を任せるから、ウチの家族は殺され た!!」って大騒ぎ。関係ねぇよ。医学部出た麻酔医が担当したって、外科のドク ターが手術中にヘマすりゃあ、患者は死ぬ。でも訴訟になってね。歯科医も訴えられた。この事件以降、厚労省が法律を変えて、歯学部を出たら、掲げて良い看板は「歯科・小児歯科」、「矯正医」、「口腔外科」のみ。「麻酔科医」になれ なくなったんだ。

林は、どこの歯科医よりも入れ歯の研究を、長年重ねて来たドクターでして、 実の兄貴が、かなり腕の良い歯科技工士だというメリットもあって、まず凡百な 歯科医には施行がムズカシイ、「1本入れ歯」(たった1本だけ抜けた部位に、 入れ歯を装填する)の治療も積極的に行っています。林のモットーは、高齢にな り、いくら自分の歯が残っていても、歯と歯茎の衰えにより「ちゃんと噛めな い」のであれば、自分の口腔内に、ちゃんとした入れ歯を装填し、「トンカツ定 食ぐらいなら、入れ歯を忘れて、美味しく食べられるようになります」……という ものです。
じつは林は歯科医でありながら、すでに5本の歯抜けであり、自分で入れ歯を 入れたそうです。入れ歯をハメた歯医者だからこそ、口の悩みを抱える患者の気 持ちが、リアルに理解出来る、というわけでしょう。

──でもさ、林には悪いけど、入れ歯って、どうにも年寄りクサイ印象が強いなぁ。できれば入れ歯を避けて通りたい!! って感じる患者は多いでしょ?
林 そうなんだよ。でもね、咀嚼が一番大事という観点からすりゃ、歯周炎がひ どくてグラグラになった歯でモノを食べられなくなるより、入れ歯を入れて 「しっかり両側の歯でモノを噛む」「咀嚼する」って行為が、マジっ、本当に、 人間の健康には重要なんだよ。

──随分前から、8020運動ってのが、あるでしょ。「80歳になった時に20本 は、自分の歯を残しましょう」ってやつが。
林 厚労省が提唱する標語ね。あれが、そもそも、おかしい。

──ほぉ、そうなの。どこが?
林 人間の永久歯の寿命ってな、人類学的におおよそ50年なんだよ。俺たちは来年、還暦だろ? だから、平均値でいやぁ、すでに数本抜けてて不思議はない。 それが標準だから。ま、個人差はもちろんあるし、この20年、日本人の特に女性 のデンタルケア意識は、すこぶる向上しているから、俺たちが子供の頃よりも、 高齢者の残存歯数は格段に増えている、とは思う。でもな、歯の寿命は強く遺伝 に左右するから、いくら毎日複数回、ていねいに磨いても、歯や歯茎が弱い体質 なら、時期がくえば必ず歯は抜ける。俺の家系は、みごとに歯が弱い。だから俺 は、歯医者なのに、すでに入れ歯だよ(笑)。

──あらら、全然、わからなかった。
林 だろっ? 今日、一緒に飯を喰って、俺が入れ歯なこと、まったく気付かな かっただろ? 自分の口に、ちゃんとした入れ歯が入れば、食生活は何も困らない。

──なるほどね。
林 80歳で20本の歯が残っていたとして、問題は、その残り方だよ。大概の場 合、強く負担がかかる臼歯ね、どうしても奥歯から抜ける。上下の臼歯が抜けた後、残りの歯が上下チグハグに抜けると、どうなる? モノを噛む時に、上下の 歯が上手く噛み合わないだろ。

──ほぉ、確かにね。
林 上手く噛み合わない歯を20本残ったところで、意味ねぇだろ、モノが噛めな いんだから。咀嚼のことを考えりゃ、腕の良い歯医者に自分の口腔内に、ちゃんとした入れ歯を入れてもらう方が、はるかに患者の生活レベルは上がるはずだよ。
結局ね、8020運動が推奨されたことで、80歳を過ぎて20本の歯が残ってい る人の、健康度が高い。そんな事実が証明されたんだな。だから厚労省は20本と ほざく。でもなハゲ!! よく聴けよ。じゃあ歯科医の役割って何だ? 哀しく も、いみじくも、自分の歯が弱くて、歯が無くなっちゃった人は、どうしたらイ イんだ?

──立つ瀬がねぇよな。
林 浅瀬で溺れさせちまってるだけじゃねぇか。厚労省の役人は、どう責任を取 るんだ? と……俺は言いたいね。歯医者の責任っつーのはさ、20本も自分の歯を 残している年寄りと、入れ歯になった年寄りと、なんら遜色ない健康度を与える ことなんじゃね?

だから8020運動つーのは、歯医者の敗北宣言なんだよ。でも、そこを救う のが、真っ当な歯医者だろ? 厚労省はアホだよな!! ついでに、健康オタクの お前も、何も本質をわかっちゃいない。すべてまとめて、バカヤローだ!!

と、まぁ……こんな形でインタビューは進みます。如何でしょう? 「お口の専 門家」の林ドクターに、興味を持っていただけましたでしょうか?

毎回、ネタを変えて「目からウロコ」の話が、コラムに書かれます。私の「昭 和歌謡」コラム同様、ご愛読下さいますよう、この場を借りてお願いいたします。

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

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