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小林旭

昭和歌謡_其の四十三

「150トンのダイナマイトと、ラグビーワールドカップ」

『ダイナマイトが百五十屯』

 前回のコラムで私は、昭和33年(1958年)に大ヒットした歌謡曲、石原裕次郎の『風速四十米』と、千葉南部エリアに甚大な被害をもたらした、台風15号における「最大瞬間風速57.5メートル」暴風雨の、殺人的猛威をたとえて、「まさに天空爆弾」と記しました。

無慈悲な天空爆弾は、さらに日本列島を痛めつけてくれました。「観測史上まれなる超巨大!!」という台風19号は、突風よりも豪雨の被害がもの凄く、山田太一脚本の名作ドラマ『岸辺のアルバム』にも描かれた、多摩川の氾濫以来、ウン十年ぶりに、二子玉川近辺の両沿岸エリアを浸水させました。

他ならぬ私が住まう、上州は高崎駅から車で5分、蔑称「川向う」にある、高台の集落、……の真下に住まう皆さんは、「危険水位をはるかに超えた」烏川(※一級河川です)の氾濫が間近に迫り、ほぼ全員、強制的に避難所に移されましたし、

都内、江東区東雲の高層マンションに1人暮らし、介護生活12年になる母親からは、「さっきから1時間以上も、部屋がガタガタ音をたてて揺れて、怖くてしょうがない」と、不安げに何度も電話がかかってきました。

嗚呼、人間は、どれほど賢くなっても、しょせん自然には敵わない!!

ひたすら打ちひしがれてしまった、台風一過の夜、私は、鍛え抜いた人間の肉体だけが持つ、「最大瞬間風速57.5メートル」をはるかに凌ぐ、強烈で強力なエナジーの放出を、TV画面越しにリアルに体感させていただきました。

ラグビーワールドカップ、日本対スコットランドの試合。

体格では格段に劣るはずの、わが国の代表選手たちが、スピーディかつフレキシブルな動きを武器に、果敢にラグビー発祥の流れを汲む国と〝がっぷり四つ〟の闘いに挑みました。それも、敵が「お家芸」とするオフロードパスとやらを、みごと連発して決めながら。

7点差のリードを死守した、ノーサイド直前の数十秒──、選手たちは、決して逃げませんでしたね。私はオハズカシナガラ、多くの老若男女と同じく、しょせん〝にわか〟に過ぎぬラグビーファンですから、競技自体のルールもセオリーも詳しく知りませんけれど、〝あの〟場面で、たとえばサッカーならば、わざと関係ない方向にボールを蹴って、時間稼ぎをしたり、野球ならば敬遠を繰り返したり……。

でも彼らは、そんな卑怯な戦略など、はなから考えにないがごとく、愚直なまでに敵陣の猛攻を、必死に押し返しました。代表選手15人の、生身の肉体から発される、己の限界ぎりぎり、いや、そんなものはとっくに振り切った、超人的なエナジー、パワーだけを頼りに、「てやんでぇー、べらぼーめ!!」「日本人をナメんなよ!!」とばかりに、押して押して押しまくって……。

「よし、そのまま、そのまま!! あともう少し!! 頑張れ!!」

私は、知らず目頭に熱いものを感じつつ、声に出して叫んでいました。そしてその叫びが、なぜか歌に変わりました。

ダイナマイトが百五十屯

「♪~カラスの野郎 どいていな トンビの間抜けめ 気をつけろ~♪」

小林旭の大ヒット曲、『ダイナマイトが百五十屯』(1958年11月15日発売/作詞:関沢新一/作曲:船村徹)の冒頭です。

いきなり唄い出したものだから、カミサンに「うるさい。今イイところなんだから、静かにして!!」と叱られましたが、止まりませんでした。

「♪~ダイナマイトがよ~ ダイナマイトが百五十トン ちくしょう(畜生) スコットランドなんて ぶっとばせ~♪」

歌詞がやたらに乱暴ですけれど、メロディラインもまた、演歌の大御所・船村徹の作品とは思えぬほど、下品なまでにテンション高く、ズドーンと高音域に跳ね上がります。

呆れてカミサンは、すごい形相で私を睨みつけて来ましたが、すぐに私が泣いているのに気付いたようでした。

試合の残り時間を、私は私、カミサンはカミサン、それぞれに、5、4、3、2、1……とカウントダウンし、ノーサイドのホイッスルと共に、

「やったぁ~!! 日本が勝ったぁ~!!」

夫婦そろって声を上げ、史上初、日本がワールドカップの決勝リーグに進出できた喜びを噛みしめつつ、おおげさ過ぎるほどの拍手で、代表選手15人の面々を讃えたのです。

「まだまだ日本人は大丈夫だな」……思わず、私がつぶやくと、「もちろん、当たり前じゃないの。まだまだ、こんなもんじゃないわよ」と、カミサンが拳をギュッと握りしめました。

私は本音で、『ダイナマイトが百五十屯』の歌詞が、〝おまじない〟代わりに効いたと確信しているのですが、またカミサンに呆れられそうでしたので、口にはしませんでした。

♪~カラスの野郎 どいていな トンビの間抜けめ 気をつけろ
 癪(しゃく)なこの世の カンシャク玉だ
 ダイナマイトがよ~ ダイナマイトが150トン
 畜生(ちくしょう) 恋なンて ぶっとばせ
 命も賭けりゃ 意地も張る 男と男の約束だ
 行くぜ兄弟 カンシャク玉だ
 ダイナマイトがよ~ ダイナマイトが150トン
 カックン ショックだ ダムの底~♪

メチャメチャ威勢の良い、男の中の男の応援歌のようでありながら、まぁ、なんのこともありません。恋にやぶれて悔しい野郎が、どうにも収まらぬ胸の内を晴らさんとばかりに、150トンもの大量な爆薬に火を付けて、ドカンと一発、すべて何もかも吹っ飛ばしちまえ!! という……、じつにミモフタモナイ歌詞の内容です。

ま、理屈をいえばその通りなのでしょうが、これを小林旭の、やけに景気イイ甲高い声で唄われりゃあ、もう、それだけで勝負あった。シノゴノ余計なこたぁ、脇へ置いておいて、「150トンのダイナマイト、上等じゃねぇの!!」という気分にさせられます。

今の日本人に必要なのは、〝こういう気分〟ではないですかね。脳天気なまでに威勢良く、まさにイケイケドンドンの心意気。カラスやトンビはもちろん、スコットランドだろうが、ニュージランドだろうが、♪~行くぜ兄弟 カンシャク玉だ!!~♪ てな調子で、気分だけでも「蹴倒してやるぞ!!」というね。

恨んでも憎んでも、どうにもならない、圧倒的破壊力の自然現象を前に、人間が唯一、抵抗、対抗できるとしたら、「決してあきらめない!!」と心に強く念じること。その事実をリアルに教えてくれたのが、ラグビー日本代表の15人の選手たちでありました。

強く念じて、念じて、念じ続けて、それでも叶わなかったら、どうしましょ? 暗くウジウジと塞(ふさ)ぎ込んでも、状況が変わらないなら、悩むなんてバカバカしい。せめて気分だけでもイケイケドンドン!! 〝おなじない〟代わりに『ダイナマイトが百五十屯』を鼻歌で……。

そういえば、リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞に輝いた、旭化成勤務の吉野彰名誉フェローも、受賞の会見で語っていましたね。

「まあ何とかなりますわなあ、という脳天気さが、研究には絶対、必要ですね。執念深さと脳天気。この2つをどうバランスさせるかが、一番のポイントです」

惜しくも決勝リーグ初戦、日本代表チームは、南アフリカの猛者との一騎打ちに、大差で敗れましたけれど──、

どっこい、まだまだ日本人は、こんなもんじゃない!!

One for all All for one

ラグビー精神を胸に、老若男女みんなで〝今〟を乗り切りましょう。

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

 

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