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ロスアンジェルス・ドジャース
大谷翔平投手のトリセツ

お口のお咄し 番外編

ピギーバック(piggyback)

ピギーバック、聞き慣れない言葉です。これは英語で肩車やおんぶといった意味です。

この言葉は様々な分野や局面で色々と意味を変える言葉なのですが、メジャーリーグにおいては、先発投手のあとに第二の先発投手を起用して、通常一人のピッチャーで賄う試合の中盤までを、二人のピッチャーをワンセットとして背負わせて、あわよくば試合終盤までのイニングを消化し、勝利を得るというピッチャーの起用法を表す意味となります。

大谷投手、2度の肘の手術と投手復帰への道

大谷翔平選手は、2023年秋に二度目の肘のトミージョン手術(正確にはトミージョン手術とは術式の違うものらしいが公表はされていません)を受け、2024年は打者のみで試合に出場し、メジャーリーグ史上初の50-50(フィフテイ・フィフテイ 50本塁打・50盗塁)を達成、自身3度目のリーグMVPを獲得しました。

そして今年2025年、満を持して1年以上のリハビリを経てマウンド復帰を目指し、とうとう6月にドジャーススタジアムで、投手として復帰のマウンドに立ちました。

以降、徐々に投球回数を増やしていき、この9月16日(日本時間)には5回をノーヒットノーランに抑えるまでの回復を観衆に見せ、手術前にも劣らない、さらに進化した圧倒的な力量をそなえた素晴らしい姿を見せています。

しかしながら、この2度の手術を考えれば、次に同じ肘の故障が起きれば現実的に今後投手としての復帰は難しいでしょうし、本人のコメントでもそのような発言が実際に述べられています。その上で、今後チームの勝利に確実に貢献する力量を持って、出来得る限り長い年月で投手を継続するには、その登板スタイルと登板管理に知恵を絞り、慎重な上にも慎重な姿勢でしっかりとした登板システムを構築する必要があります。

何しろメジャーリーグという世界最高峰のメンバーの集まる舞台で投打ともに活躍するには、並外れた体力と精神力、そしてそれ以上に、どうしても徐々に衰える人間の身体の理を踏まえた上での知恵が必要となります。

100マイルを越える投球を数多く投げれば、肘を始め、身体に対する負荷は高く、かといって球速を故意に抑えるような投球ではメジャーでは通用しません。そして強い投球を出来るだけ負担なく継続するには、投球数を減らすよりイニング数を抑えることの方が賢明だと思いますし、さらにその投打の負荷に耐える身体を確立するには、今年は負荷をかけすぎないように徹底して投球イニングの管理をすることが肝要なのではないでしょうか。

私は人間の身体が、1年以上の長いブランクから試合で全力投球をするという強い負荷に、見かけ上ではなく、完全に適応・回復するには、実際の試合で投げ始めてからやはり年単位の時間が実際には必要だと思っています。ですから、大谷選手には、この2025年の投手としては、ポストシーズン含めて4イニング以下の投球イニング数で通し、身体的リスクを犯さずに投手としての投球身体の完全回復を目指すことが、来年以降も長く投手生活を続けられるための知恵なのだと思います。そこでチームの勝利にも大谷選手の身体的怪我のリスク低下にも、絶大な効力を発揮すると思われるのがピギーバック方式での大谷投手起用法です。だって、大谷選手には来年以降まだ8年の契約があるのですから。

メジャーリーグの投手起用の特徴

メジャーリーグの投手起用については、メジャーリーグのベンチ入り人数の制限について知っておかなければなりません。

メジャーリーグでは一試合でベンチ入り(試合に出していい)選手の人数に制限があります。レギュラーシーズンの8月末までは26人で、そのうち投手は最大13人までです。そして9月に入るとその枠が二つ広がり28人となり、投手は最大14人までとなります。これは若手にチャンスを与える意味や、優勝争いをしているチームには選手層に余裕を持たせて疲れの出る9月に十分な優勝争いが出来るようにとの意味合いがあります。その後レギュラーシーズンを終え、10月のプレーオフに入ってワールドシリーズまでの熾烈な戦いの場面になると、再びベンチ入り人数は26人(投手最大13人)に戻されます。

通常レギュラーシーズンでのベンチ入りメンバーの内訳は、野手13人の内、特殊ポジションのキャッチャーが2人で、あとのピッチャー以外の7つのポジションとDHを11人で賄います。こうみると長いシーズンを本当に少ないベンチメンバーで賄わなくてはならないのです。

そしてピッチャーは、先発投手が5人でリリーフ投手が8人、又は先発を6人にしてリリーフを7人で回します。つまり先発が5人だと基本的に中四日での登板となり、6人だと中五日での先発ローテーションとなります。

昨今のメジャーリーグの投手の故障の多さを鑑みれば、出来れば先発投手を6人にして中五日でローテーションを組んだ方が怪我のリスクは減るように思われるのですが、その時点での各チームの怪我による投手の離脱具合などの事情によって、先発とリリーフの人数バランスは変わらざるを得ません。

例えば去年のドジャースは、先発に怪我人が多く、リリーフ投手だけで試合を組み立てるブルペンデーでの試合が多かったのですが、これをしっかりと勝利すること出来たのでワールドシリーズ制覇を成し得たといっても過言ではありません。

しかしこのブルペンデーは、その日のリリーフ投手の調子に大きく依存し、かつ、その日投げる投手の人数が多いので、調子が良いか悪いかのバラツキに依存度が上がります。従って、試合運営としては安定性に欠けギャンブル的な要素が高く、他の試合も含めるとリリーフ投手の使用頻度も高くなるので、疲労蓄積や怪我のリスクが大きいなどの弊害もあり、各チームブルペンデーの多用は避けたいというのが基本的な運営方針となります。

ポストシーズン

ポストシーズンはワイルドカード(3戦制)、地区シリーズ(5戦制)、地区優勝決定シリーズ(7戦制)、そしてワールドシリーズ(7戦制)を通してトータル13勝すれば、栄えあるワールドチャンピオンとなります。そのすべてをフルで戦えば、22試合をこなさなければなりません。つまりどのチームもポストシーズンに臨むにあたり、一戦も気の抜けない短期決戦を積み重ね、これを約一か月にわたって勝ち抜くだけのチーム力を、高い戦略性の元に構築しなければならないのです。

ですから、このポストシーズンの戦い方の基本方針は、短期決戦の積み重ねですから、やはり守備力(投手力)を高くすることが大事になります。理想的には、6回を2失点以内(これで投手の防御率は3点)の試合を作る良い先発投手、その後を受ける強い中継ぎ陣、そして絶対的な抑え投手がいることです。打線は水もので計算するのは難しいですが、投手力はある程度計算できます。また、失点しなければ絶対に負けることがないという野球の持つ特性を考えれば、投手力の高いチームが明らかに有利です。ですから、ポストシーズンに出る各チームは、少しでも良い投手を一人でも多くベンチに入れたいというのが本音です。

その上で、先に述べたベンチ入り出来る投手の人数が13人であることを考えると、二刀流枠の大谷をピギーバックでの先発要員に回せば、大谷選手は野手登板と捉えることが出来、さらに大谷投手は非常に高い確率で4回を無失点に近い形で抑える力があるので、ピッチャー枠を使わずに4イニングを消化出来ることになります。別の視点で見れば、ドジャースだけピッチャー枠を14人として使えるという意味です。

そしてこの意味は野球一試合の9回の攻防の内、ドジャースは9回の攻撃が出来、ピッチャー枠を使う守備は5回で済むということになり、数字的に見れば、ピッチャー枠を使わずに、勝利する確率が跳ね上がるという理屈です。そこに、絶対的な抑えとして力を発揮出来る投手がいれば、相手チームは4回の攻撃で9回攻撃してくるチドジャースに打ち勝たねばならないという非常に嫌がられるチーム構成となります。

ところが今のドジャースは、リリーフのタナ―・スコット投手、カービー・イェーツ投手、ブレーク・トライネン投手らの非常に信頼されていたベテラン勢投手が、試合を終盤にひっくり返されるケースが目立ち、チームのアキレス腱となっています。

この現状を踏まえ、日本ハムで大谷を指導したこともある新井氏はメディアに対し、「短期決戦のポストシーズンとなれば、先発は5人、もしくは4人でも回せるのではないでしょうか。先発の誰かをリリーフに回すことができると思います」と指摘し、既に大谷がリリーフ登板も辞さない覚悟を示しているが、「経験、適性から見て、現在のドジャースの先発陣でクローザーに一番ふさわしいのは、山本だと思います」と私見を述べています。

確かに山本選手はプロ2年目の2018年、オリックスのセットアッパーとして54試合に登板し、32ホールドをマーク。先発転向後も侍ジャパンの一員として、2019年の第2回WBSCプレミア12、2023年の第5回WBCでリリーフをこなしています。

現在、ドジャースはポストシーズン進出を決めていますが、去年と違いワイルドカードからの出場が確実な状況で、去年より、最初のシリーズ3戦の中で2試合に勝たねばなりません。

ポストシーズンは短期決戦で、2、3試合毎に一回の移動日(休息日)があることから、先発は4人体制にして基本的に中四日で回すのが通法となっています。しかし、いかに良い先発投手が揃っていたとしても、やはり絶対的なクローザーのいるチームが断然強いのが現実です。今、ドジャースの投手陣を見渡せば、現時点で良い先発投手が、山本、スネル、グラスノー、シーアン、大谷、カーショーの6名がおり、この中から4名を先発とし、大谷を抑えに使えないかのような方向性で議論が進んでいます。

しかし、私は思い切った秘策として、新井氏の言うように、山本を抑えに持っていくことが正解のように思います。

大谷リリーフ論

現MLBのルールでは、大谷をリリーフで使うとその後DHとしてバッターで使えなくなります。さらにリリーフは状況に応じた登板となるので、いつ行くか決められず、リリーフでの登板準備は非常に煩雑で、心身ともに高い負荷が掛かり、病み上がりの大谷の起用法としては現実的ではなく、とても採用できるものではありません。

そこで打者として体力を残しつつ、先発としての力量が十分ある大谷選手を、投手枠を使わずに投手として使う起用法がベストでしょう。

具体的には、右投げの大谷投手には左投げで速くて強い球を投げる投手をピギーバックさせることで、すべての有利な条件を取り入れた戦略性の高い起用法となるのではないかと思います。そのピギーバックさせる候補には、若手のロブレスキー、ドライヤーが適任です。そして球は速くありませんが、意表をついて、もし経験豊富なカーショーとのピギーバックが実現するようなことになれば、大谷選手が先発で4回、その後をロブレスキーやドライヤー、カーショーが4回、そして最後の1回をクローザーの山本が抑えるという図式が出来上がり、先発をスネル、グラスノー、大谷ピギーバック、エメット・シーアンの4枚で回せます。

まぁ、でもカーショー程の功績のあるレジェンド投手を大谷のピギーにするなんて絶対無理だよな、なんて考えていた時、ビッグニュースが飛び込んできました。ドジャースのレジェンド投手、クレイトン・カーショー選手が今季限りで引退するとのことです。

これで気兼ねなくカーショー投手もドライヤー投手、ロブレスキー投手らと共にピギーバックさせることが出来るんじゃないでしょうか。

もし大谷投手が投げた後に、カーショーが出て来て勝ち投手になったら(先発投手は5回を投げ切らないと勝ち投手にはなれないので、2番手ピッチャーが勝ち投手になる確率が非常に高いものです)、ポストシーズンに弱いと言われてるカーショーにとって、引退の年のポストシーズンでの勝ち星以上の勲章はないでしょうし、ファンたちも大谷のあとをカーショーが引き継いでポストシーズンで投げるなんという稀有な姿はもう一生観られないのです。こんなありえないようなことが本当に起こったらと思うと、ドキドキ、ワクワクと、胸の鼓動が高鳴るのは私だけではないでしょう。

ワールドシリーズ2連覇

ドジャースは、近年達成されていないワールドシリーズ2連覇を悲願とし、これを達成せんがために今シーズンを戦っています。しかし絶対的有利とのシーズン当初の予想を覆し、予想ほどの勝ち星が得られず、地区優勝をしても勝率からワイルドカードからのポストシーズンとなることがほぼ確実な情勢です。

つまり、ワールドシリーズを制覇するためには、誰もが驚くような、それでいて非常に理にかなった、思い切った策を講じて短期決戦をモノにしていく挑戦的な立場にあるのです。

大谷選手が、ロブレスキーやカーショーらとピギーバックして先発として投げることが、ワールドシリーズへ進出し、勝ち切るための秘策となると私は確信しているのですが・・・。どうなりますか?
(日本時間2025年9月23日時点執筆)

歯科医師/林晋哉 Shinya Hayashi
著者略歴
1962年東京都生まれ、62歳、歯科医師。
都立日比谷高校を経て日本大学歯学部卒業。
平成6年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、
平成26年東京都千代田区平河町に診療所を移転。
「自分が受けたい歯科医療」を追求し実践している
『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、「歯・口・咀嚼の健康医学」(さくら舎)などの著書がある。
日比谷高校時代は軟式野球部、日本大学歯学部では硬式野球部に所属し、投手。
2013年から日本大学歯学部硬式野球部コーチとしてチームの指揮を執り、2023年歯学部全国大会で優勝。
自身では大学時代に投手としてリーグ戦二期連続MVP。
2010年には草野球とはいえ完全試合を達成し、表彰トロフィーを獲得。
35年の投手生活の中で一度だけ故意死球の経験がある。

林歯科
〒 102-0093 千代田区平河町1-5-4 平河町154ビル3F
https://www.exajp.com/hayashi/

 

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