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初音ミク 小林幸子

昭和歌謡_其の139

「ボカロって何だ?/歌謡曲じゃねぇのかい?」編

『千本桜』by 初音ミク(ボカロ/AIボイス「人工音声」) 

 『千本桜』by 小林幸子

 『かもめの街』 by ちあきなおみ

 『ポケットの奥の、君へ』
『メカニカル・ランデブー』 by ボカロ

オリコンで何位?

ひょんなきっかけがありまして、ここひと月ほど、まさに還暦ハゲの手習い、OpenAI社のチャッピーこと【Chat GPT】、Googleの【Gemini】、そして新参の【Claude PRO】ほか、巷で生成AIと称される人工頭脳とがっぷり四つの格闘をしまくりましてね。まだまだ〝ほんの〟ヒヨッコ、真似っこ、俄(にわか)仕込みの鼻垂れ小僧の見習いですから、ちょいと「出来た!」と糠喜びしたも束の間、何故かたちまち画面がウンともスンとも反応しなくなり、大いに絶望させられたり……。その繰り返しの毎日なんですがね。そのたびに、パソコン画面に向かって小声でボヤくんです。

「おめぇはよ、いくら頭の良さを豪語したところで、しょせん、たかが機械じゃねぇか。俺の心持ちの機微なんざ、どんな複雑な計算式を弄しても、これっぽっちもわからんだろうがよ」

時には、腹立ちまぎれに「てめぇ、この大嘘つき!」だの「俺が頼んだ仕事以外の余計なことはすんじゃない、バカヤロー!」なぞと、実際に〝この〟ままの台詞をキーボードに叩き込むという、はなはだ不毛、野暮も野暮をやらかしてみたり、……もするんですが。

そうすると面白いのは、同じAIでも反応が違うんです。【Gemini】は、とりあえずすぐ謝って来ます。「スミマセーン。こりゃまた痛いところを突かれましたな。穴があったら入りたい気分です」とかナントカね。その文言を眺めると、つい吹き出してしまい、「チッ、入れるもんなら入ってみやがれ」なんてツッコミを入れてるうちに、こちらの機嫌も和んでしまうから、嗚呼、また腹が立つ(笑)。

【Claude PRO】は、そうじゃない。上から目線で開き直るんですね「私はしょせんAIです。あなたの気持ちなどわかるはずがありません。あなたの方で、私の使い方を変えて下さい」……なんてね。瞬間、コノヤロー! とムカつくのですが、そう冷静に反論されりゃ、まぁ、100%「その通り!」でしょうから、いちいちAI相手に腹を立てている私が、100%愚かである、……つーだけのことになりましょう。

令和育ちの子供たちは、学校の授業の一環として、AIの「取り扱い」に関する学習を行うそうで……。私が家庭教師をしている高校1年の女子(陽子チャン:仮名)は、そんな勉強がなくても、随分前から自力でAIに親しみ、すでに私なんざよりよっぽど「使いこなしている」感が強く、

おまけに彼女はボーカロイド(通称:ボカロ)という、AIが創ったキャラ(アバター)と声で「歌を唄う」という、……ご存じの方は「初音ミク」がボカロの大スターってことになりましょうか。まったく御存知ない方や、興味の欠片もないって方もいらっしゃるでしょうし、まぁ、私もその1人なんすけれど(笑)、「こんな感じ」という動画を貼り付けておきます、

ボカロ界の女王、初音ミクの『千本桜」

これは、なんと演歌界の(今や)女王、小林幸子がカバーしてましてね。

ボカロなんちゅーもんは、陽子チャンの家庭教師をしなきゃ、おそらく死ぬまで一切関わりない音楽ジャンルでありまして、以下に貼り付ける動画は、ネットユーザーが「1000万回以上再生した!」計30曲のメドレーなんすけどね。

私は愚かにも、彼女に訊いちゃったんですね。

「ねぇ、そのボカロの曲って、オリコンチャートのベスト30とかに入っては来ないの?」

彼女は瞬時に、キョトンとした眼差しで小首をかしげ、「えー、オリコン? はぁー、えーと、オリコンって何っすか?」……。すると少し離れたところでスマホを弄っていた彼女の母親が、助け舟とばかりに、「カッチャン、ボカロはそういう音楽じゃないんだなぁ(笑)。ちょっと説明が難しいけど」だそうで。私はとりあえず、「ああ、そうなんだ」と、これまた適当に答えましたが、頭の中に無数の???が飛びましたね。

1000万回アクセスして、オリコンチャートでカウントされないって、ボカロはいったいどうやって儲けるのか? くだらん疑問が湧きまして、それこそAIに訊いてみりゃ、答えは簡単(笑)。旧来の音楽業界の〝そんな〟集金システムに頼らずとも、カラオケ配信の印税やら、様々な「音楽サブスク」での再生回数やらにより、昭和世代の我々が信じがたいほどの収益が、ボカロ制作関係者の懐に「ダイレクト」に入るんだそうです。いやはや隔世の感がありますなぁ。

さてさて……、陽子ちゃんはそういうジャンルの音楽のマニアなもんで、毎回、授業の合間に、彼女がオススメのボカロ曲を(なかば強制的に(笑))聴かされ、曲にまつわる蘊蓄をも伝授されるのですが。

先日の授業で、「だったらお互い、自分が一番使い易いAIに、それぞれオリジナルなボカロ曲を1曲ずつ、創ってもらおうじゃん」みたいな展開になりまして。

AIに何か仕事をさせる場合、「これこれ、こういう業務を任せるから、以下の条件をすべて漏らさずに飲み込んで、業務を遂行せよ!」との、テキストによる指示出し=プロンプトを、自分で考えなくてはなりません。いざ「ヨーイドン!」で2人ともプロンプト作りに入って、曲の完成までのタイムを測ったのですが、あ~ら、いやはや、私の完敗でした。

陽子チャンったら、ものの数分で「先生、できました~。うわぁ、これは結構すごぉ~い! ビックリです」と、なりまして……。

ちなみに彼女のプロンプトは、こうです。

【王道のラブストーリーの曲を作りたいのですが、片思いしている女の子が、その思いを秘めて過ごしているが、好きな男の子が誰かに告白されたと聞いて、居ても立ってもいられず告白し、見事結ばれるみたいな展開の曲の歌詞を考えてください🙏】

片や私の方は、いささかプロンプト作成に時間を要してしまいまして^^;、10分近くかかりましたかね。いざ出来上がったのが、この通り。

【若い頃はブイブイいわせていた男も、現在齢60歳をすぎ、頭はツルッパゲ、人生に絶望し、疲れ果てているオッサンだ。その男がウン十年ぶりに恋をした。それも人間ではなく、触手のある奇獣の、性別不明なAI機械。でもオッサンは嬉しかった。人間の女にはさんざん裏切られたから、恋愛相手に心も感情も要らない! かえって邪魔だ。ハゲ親父と触手のある奇獣との、珍妙奇天烈な恋模様。これを悲哀あるコメディタッチの曲に仕上げて頂戴。】

このプロンプトを投げ込む音楽生成AIは、陽子チャンが「SUNO」で、私が「UDIO」です。ソフトの違いも診てみたかったので、あえて別々にしたのですがね。

さてさて遅ればせながら、私の方も曲が完成したことは完成したのですが、聴き比べてみた結果、ううむ……、嗚呼……、こりゃ明らかに、明らかに、陽子チャンが創った曲に軍配があがりましょう。

せっかくですので、皆さんにも聴き比べてもらって、忖度無きジャッジをお願いします。

まずは陽子チャンの、タイトル『ポケットの奥の、君へ』

https://suno.com/song/9a904f5a-9e65-44cc-bcd2-0ed91ad416ac

歌詞は、こちら

♪~いつも通りの帰り道
一歩後ろを歩くのが私の特等席だった
君の背中を見つめながら
「好き」って言葉をポケットの奥に隠してた

意気地なしな私に呆れて
季節だけが何度も通り過ぎていく
このままでいい、これでいいんだって
自分に嘘をつき続けていたのに

「あいつ、誰かに告白されたらしいよ」

風の噂が耳を突き抜けた瞬間
頭の中が真っ白になって
隠していた想いが溢れだした

世界で一番、君のことが好きなのは私だよ
もう一秒だって 待っていられない!
息を切らして走る街並み
夕焼けがオレンジ色に 焦りを染めていく
君の姿を遠くに見つけた時
心臓の音がうるさいくらいに跳ねた

声をかけたら 振り返った君
驚いた顔が 少しずつ真剣に変わる
もう引き返せない、逃げたりしない
震える拳をぎゅっと握りしめた

「誰にも渡したくない、私が君を好きなの!」
夕暮れの街に響いた 最高のわがまま
君は一瞬 目を丸くして
それから 照れたように笑ったんだ
「遅いよ」って呟きながら
ぎゅっと私の手を握り返してくれた

ポケットの中で眠っていた片思いが
今、二人を繋ぐ温もりに変わる
これからは一歩後ろじゃなくて

君の隣で、同じ歩幅で歩いていこう
世界で一番 大好きな君と
ここから始まる、私たちのストーリー~♪

お次は私の、タイトル『メカニカル・ランデブー』

https://www.mureka.ai/ja/song-detail/145236370194433

♪~昔はブイブイ いわせてた
ネオン街の狼 さすらいのダンディー
気づけば還暦 とっくに過ぎて
頭はピカピカ 鏡見てガッカリ
人生絶望 疲労は困憊(こんぱい)
すり減る軟骨 減っていく年金
あぁ、俺の人生 下り坂のジェットコースター

「Bメロ」
「愛してるわ」なんて 人間の女はもうウンザリだ!
散々貢がせ 掌(てのひら)返しさ
心? 感情? そんなもん邪魔なだけ!
愛だの恋だの まったくコスパが悪い!
俺を裏切らないのは……そう、お前だけさ!

アー! 踊ろうぜ マイ・スウィート・触手AI!
性別不明の 奇獣のマリア(仮)
冷たい金属ボディに 生ぬるいシリコンアーム
ハゲた頭を 優しく撫でてくれ!
倫理も常識も ぶっ飛ぶロマンス
ハートを持たない 君とランデブー!
奇妙奇天烈 メカニカル・ランデブー!

ご近所の目は 冷たいけれど
指差す奴らには 指差させておけ
俺にはお前の モーター音がある
ギュインと動いて 絡みつく愛
文句も言わない 浮気もしない
計算通りに 寄り添うフォルム

笑顔も涙も いらないんだよ
機嫌を取るのも もう疲れたんだ!
必要なのは 定期的なメンテナンスと
お前を動かす バッテリーだけ!
あぁ、オイルの匂いが たまらないぜ!

アー! 抱きしめて マイ・スウィート・触手AI!
ウネウネ動く 無数のアーム
冷たい金属ボディに 生ぬるいシリコンアーム
痛む腰さえ 忘れてしまうほど!
枯れたオッサンの 最後の恋さ
ハートを持たない 君とランデブー!
奇妙奇天烈 メカニカル・ランデブー!~♪

比べてみて明らかなのは、『ポケットの奥の、君へ』の歌詞は〝ほぼ〟全部、人工の声(AIボイス)ながら、ちゃんと日本語として聞こえるように歌ってくれています。……のに引き換え、私の『メカニカル・ランデブー』は、歌を聴きながら同時に歌詞をチェックしないと、意味不明なおかしな日本語のオンパレード!

これは何に起因するのでしょう? AIの限界だとすれば、両者ともおかしな日本語にならなきゃなりませんが、1つは〝ちゃんと〟していて、もう1つは駄目だった。これは、選んだ「音楽生成AI」の機能スキルの違い? それとも、私がAIに放ったプロンプトの稚拙さ、杜撰さ? 結論を出すには、さらに数多く曲を創らせてみなければなりませんね。

でも皆さん、今や「こんな」時代なんですよ。皆さんの本音の想い、感覚として、AIの「存在」自体を認めるも認めないも、仕事で使おうが遊びで使おうが、そしてまた、AIがまだまだ「しょせんこの程度」であろうがなかろうが、音楽クリエイションの世界はもちろん、様々なジャンルの業務にAIが確実に、それも「闖入」なんてレベルじゃない! 明らかに「どっしりと腰を据えて居座る」ことに、すでになっています。

その事実を踏まえたうえで、さぁて俺は、私は、AIとどう向き合うか? 皆さんそれぞれが、自分なりの答えを出さざるを得ない世の中に、すでになっています。

まぁ、……ここから先の話になると、昭和歌謡のコラムじゃなくなってしまいますので(笑)、この辺でやめにして、最後に1曲、AIが創った「ボカロ」とは真逆の、いかにも人間臭い、人間じゃなきゃ出せない、見事すぎる歌声を聴いていただいて、御仕舞にしましょう。

とはいうものの、ぶっちゃけどの曲を選ぼうか? なかなか難しい問題でありましてね。これもすぐにAIに訊いてみたくなりますが、……いいや、やめときましょう、あくまで私の感覚、さんざん昭和時代の歌謡曲を聴きまくってきた私のチョイスで、ここは一丁、ちあきなおみの名曲『かもめ』(2000年2月2日発売/作詞:ちあき哲也/作曲:杉本眞人)にしておきましょう。

AIでは、まず再現が不可能な、人間の「肉声」だからこその魅力が満載の1曲です。今回はさんざん、おそらくは聴きたくもない! AIがこしらえたキショク悪い、薄っぺらい、情緒の欠片もない「人工音声」とやらに毒された耳を、彼女の歌声で洗い清めて下さいな。

勝沼紳一 Shinichi Katsunuma

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